本研究では、わが国の都市部における自殺未遂の実態およびその背景要因について明らかにするため、政令指定都市A市における2009年~2011年の自損行為による救急搬送の悉皆データベースを用いて分析した。自殺未遂による救急搬送事例の65%は女性、特に20~39歳の女性であった。男女ともに傷病程度の低い自損行為が多く、手段としては薬物・過量服薬および切傷が多くみられたが、これらの傾向は特に女性で顕著であった。身体疾患の既往歴は男性の事例でより多くみられた。一方、女性事例の80%、男性事例の約半数に精神疾患の既往歴が確認された。ただし、アルコール・物質使用障害のみは女性よりも男性で多くみられた。
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