研究課題/領域番号 |
25871177
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
乾 雅史 独立行政法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, 室長 (20643498)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TGFβ制御因子 / スクリーニング |
研究概要 |
1)USP15のリン酸化について 本年度はsiRNAによるcandidate searchによりUSP15のkinaseを同定する事を目標としたが、文献情報からUSP15にはATMの認識配列が存在する事が明らかとなったためその認識配列に変異を導入したUSP15 phosphodeficientとUSP15 phosphomimic変異体を作成した。 2)新規TGFbシグナル制御因子の探索について 本年度は新規TGFbシグナル制御因子を探索するためにハイスループットスクリーニングを行った。384 well plate、TGFbレポーターpCAGA12-luxおよび293T細胞用いて、約15000遺伝子(重複もあり)についてTGFb刺激によるレポーターの活性化に与える影響を評価した。その結果レポーター活性をコントロールの3倍以上促進するものおよび抑制するものが多数得られたので、その上位50ずつをリスト化し、二次スクリーニングに供した。96 well形式でpCAGA12-luxおよびpARE-luxを用いて複数回アッセイを行い、異なる実験スケールおよび異なるTGFbレポーターについて候補因子のシグナル制御能を評価し、一次スクリーニングの結果をvalidateした。その結果、44の抑制因子および45の促進因子がコントロールに比べてシグナルを抑制および促進することが確かめられた。これらの因子のほとんどはTGFbシグナルの制御について報告されていないが、その中にはTGFbシグナルのmediatorであるSmad3や既知の抑制因子であるTRAF2が含まれていたことからスクリーニングの妥当性が示唆された。以上、本年度の研究より新規のTGFbシグナル制御候補因子が多数得られた。次年度以降はこれが他のシグナルの制御を受けるかどうかを検証し、シグナルクロストークについて検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) USP15のリン酸化について 本年度はUSP15のリン酸化部位、リン酸化酵素候補を決定すること、またそのリン酸化部位に変異を導入した変異体を作成する事が出来たため、計画当初の予定とは異なる方法論ではあるが目標を達成できている。 2) 新規TGFβシグナル制御因子の探索について 計画当初に予定していた約6000遺伝子の発現ベクターのライブラリ(MGC clone)のハイスループットスクリーニングに加えて、約9000遺伝子の発現ベクターからなるもうひとつのライブラリ(FLJライブラリ)のスクリーニングも行い、含まれる遺伝子に重複はあるもののより幅広い遺伝子についてスクリーニングする事が出来た。また、一次スクリーニングに用いたpCAGA12以外のレポーターを用いて二次スクリーニングを行いレポーター特異的な偽陽性を排除する事が出来たため当初の予定以上の結果を達成する事が出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) USP15のリン酸化について 今後はUSP15のphosphodeficient、phosphomimic変異体を用いてSmad2/3に対する結合能、脱ユビキチン化能、DNA損傷への応答能などを検証して行く。一方で上記のような過剰発現を用いた実験ではリン酸化等の翻訳後修飾による制御が過剰発現による大量のタンパク質に対して十分に効果を与えられない事も考えられる。そのような場合にはまず細胞の内在性のUSP15をshRNAによってノックダウンする、またはゲノム編集技術を用いてノックアウトし、変異型のUSP15をウィルスによって導入あるいはノックインする事も検討する。 2) 新規TGFβシグナル制御因子の探索について 今後はスクリーニングによって得られた因子がまず細胞の内在性のTGFβ応答を制御し得るか、標的遺伝子の発現および増殖抑制等の細胞応答を指標に評価する。次にこれらのTGFβ桜桃を制御しうる因子について他のシグナル伝達経路によって制御されるかを検証する。細胞の内在性のTGFβ応答は制御の効果が顕著に観察されない事も考えられる。そのような際にはよりシグナル制御に対する感度の高い系、例えばアフリカツメガエルの胚に対するマイクロインジェクション等によって評価する可能性を検討する。
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