TGFbシグナルは多様な細胞種において様々な生命現象を制御するために、細胞のおかれた文脈に応じて異なる因子と相互作用し細胞特異的な機能を発揮することが知られている。本研究計画は新規のTGFbシグナル制御因子を探索し、その候補の中でBMPやFGFと言った他のシグナルのインプットの有無によって制御機能を変化させるもの、すなわちクロストーク因子を同定、解析することを目的に研究を行った。平成25年度にハイスループットスクリーニングによって同定した約100の新規のTGFbシグナル制御因子候補に対し、平成26年度はBMP、FGF、Wntの各シグナル刺激の下におけるTGFbシグナル制御能の変化を観察した。その結果、無刺激状態ではTGFbシグナルの抑制能を示すがBMP2の刺激化ではTGFbシグナルを抑制しない因子Aや、無刺激状態でTGFbシグナルを促進するがFGF2存在化ではその活性がさらに高まる因子Bなど複数の他シグナル依存的TGFbシグナル制御因子を同定することが出来た。前者は細胞膜に局在する蛋白質でありレセプターレベルでの機能が予想される。後者はRNAプロセシングに関わる蛋白質であり、TGFbシグナル伝達因子の発現がRNAレベルでFGFシグナルによって制御されている可能性を示唆している。これらの因子、および作用する分子的な過程は全く新規のものであるとともに、これらはTGFbシグナルと他のシグナル伝達系のクロストークの焦点となるため、今後細胞レベルでの作用機序および個体の発生や恒常性における役割を明らかにすることで複数のシグナル伝達間の相互作用が明らかになると期待される。
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