研究課題/領域番号 |
25871180
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
栗原 望 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 支援研究員 (40456611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨端板 / 成長 / 哺乳類 / 脊柱 |
研究概要 |
本研究は、哺乳類のみが有する骨端について、その意義を解明することを目的とする。骨端の意義については、1)骨の成長を制限するも、2)関節の運動を制御する、3)系統的意義がある、などの説が過去に提唱されたが、いずれも哺乳類全体あるいは脊椎動物全体に適用できる解釈ではない。本研究では、これまでの説を検証しつつ、骨端の意義を考察する。一年目の昨年度は、説1)を検証することを目的として、鯨類の脊柱の成長様式を調査した。当初の計画では、国内での標本数が最も多いと思われるスナメリを用いる予定であったが、絶対的時間軸を示すための齢情報の付随した標本はカズハゴンドウに多かったため、用いる種をスナメリからカズハゴンドウに変更し、調査を行った。 調査の結果、脊柱の長軸方向の成長は、椎体の前端と後端に形成される骨端板が椎体に癒合した後も起こることが示唆された。哺乳類の骨の成長は、骨幹(椎骨の場合、椎体部分)と骨端(椎骨の場合、骨端板部分)の間にある骨端軟骨で起こるため、一般的には、椎骨の成長は椎体と骨端板が癒合すると停止すると言われている。しかし、本研究の結果は、骨端板が椎体に癒合した後も成長が継続することを示しており、哺乳類の骨学の常識を覆す成果となった。また、説1)「骨端が骨の成長を制限する」というを否定する結果となった。ここでの成果は、現在論文としてまとめている最中である。さらに、骨端板の癒合後の成長は、骨端軟骨で起こる成長ではなく、骨膜で起こる成長によるものである可能性が示唆されたので、今後、この点について調査を進めるつもりである。 一方、胎仔期の骨の発生について観察するためのアリザリン染色標本の製作は、予想外に進まなかった。従って、本年度の早い時期にアリザリン染色標本の作製を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究内容とその成果については、当初の計画通りに進めることができた。しかし、本年度の研究計画を遂行するための準備(アリザリン染色標本の作成)が予定よりも大きく遅れてしまったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、骨端のない骨の大きさの成長様式を明らかにする予定であるが、昨年度の成果を踏まえ、骨膜で起こる成長についても調査を行うつもりである。方法は鯨類の椎骨と骨膜を含む組織切片を作成し、骨膜における骨芽細胞の有無や数等を、骨端板の椎体への癒合後とその前、年齢ごとに比較する。この研究を進めるには、新鮮な標本を入手する必要があるが、鯨類の標本はほぼ自然下で死亡した個体の回収することにより得られるものなので、目標をどの程度達成できるか不明である。従って、基本的には、計画通りに骨端板のない骨の成長様式を調べることに集中する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究計画では、骨格標本の調査および胎仔のアリザリン標本を作成する予定であった、研究の進行が遅延したためにアリザリン標本の作成をほとんど行えなかった。その結果、アリザリン標本作製のための試薬類をほとんど購入しなかったことにより、次年度使用額が生じた。 2年目となる本年度に、アリザリン標本を作成する予定なので、生じた次年度使用額は全てアリザリン標本作製のために試薬類に使用する。
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