哺乳類の骨は、骨幹の両端あるいは片側に、すなわち関節部分に、「骨端」と呼ばれる小骨を形成するが、その意義については明らかにされていない。本研究では、骨端に関する諸説を検証するとともに、骨端の意義について考察した。 鯨類の椎骨では、骨端の癒合後(骨端と骨幹の間の成長軟骨消失後)に、成長が起こっていた。このことは、骨端が骨成長の制御因子であるという説を否定する。また、骨内部の構造を調べたところ、成長段階に関わらず、骨端は骨幹よりも緻密で硬いことが明らかになった。これらの結果から、骨端は骨の成長を制限するというよりも機能的な意義が強いことが示唆される。成長段階に関わらず、骨端(あるいは以前骨端であった部位)の骨密度が高いことは、成長過程にある骨であっても、骨端の存在によって強い負荷に耐えうる丈夫な関節が維持されることを示唆する。 骨端を持たないその他の脊椎動物について考えてみると、緩やかな成長を一生続ける魚類や両生類、爬虫類では、骨端がなくとも丈夫な関節をつくることが可能であろう。一方、鳥類は、一生のうちのある期間にのみ成長し、その後は成長が停止するという点で哺乳類と類似する。しかしながら、哺乳類は出生後すぐに歩行や走行を求められるが、鳥類の雛は成鳥と同じ大きさに成長するまで巣の中で過ごすという点で、両者は異なる。成長過程にある個体が成獣と同様の運動をしなければならない哺乳類において、独自に獲得された形質であるといえる。
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