研究課題/領域番号 |
25871182
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
久米 正吾 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, アソシエイトフェロー (30550777)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | シリア / ユーフラテス / 青銅器時代 / 紀元前3千年紀 / 葬制 / 死者儀礼 / 祖先崇拝 / 社会階層 |
研究概要 |
平成19~22年度にかけて発掘調査を実施した紀元前3千年紀、シリア、ユーフラテス河中流域のテル・ガーネム・アル・アリ遺跡近郊墓域(代表:大沼克彦教授、国士舘大学)の調査結果を主たる分析対象とし、考古学、文献史学、理化学の相互連携に基づいて古代メソポタミア社会の葬送儀礼を再構築することが本研究の目的である。具体的には、王墓等の厚葬墓が示す考古学的証拠や楔形文字資料が記録するエリート層の葬送儀礼行為が普遍的宗教実践として当時あらゆる階層に浸透していたのではないか、という視点にたって調査研究し、(1)非エリート層の葬送儀礼行為の実態解明、(2)エリート層、非エリート層の葬送儀礼行為の異同の解明、(3)古代メソポタミアの死生観や冥界観の実証的解明、そして(4)葬送儀礼から観察される祖先崇拝など古代宗教確立過程の解明、の4 点を追求する。 この目的に向けて、平成25年度は以下の研究項目を実施した。(1) 考古学的証拠の分析:紀元前3千年紀の非エリート層の葬送儀礼に関する具体的証拠を提出するテル・ガーネム・アル・アリ遺跡近郊墓域での考古学的証拠、特に葬送儀礼を考古学的に特徴付けると予想される二次葬と水路遺構の考古記録に着目し、出土記録の解析と類例の収集を行った。(2)文献史学的証拠の分析:研究協力者からの情報提供に基づき、葬送儀礼に伴う楔形文字資料に基づく葬送儀礼関連情報、特に考古記録と密接に関連する共飲共食儀礼及び献水儀礼に関する情報収集を行った。(3)理化学的証拠の分析:本研究で分析対象とする試料を採取した墓の年代を考古資料と理化学年代の両面から確定させるために、対象墓から採取した炭化物の炭素年代測定を実施し、考古資料の年代と炭素年代測定結果は調和的であることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「多角的研究」を標榜する本研究課題では、考古学、文献史学、理化学の相互連携の実践による課題解決を目指している。今年度は考古学分析及び文献史学分析については、当初計画通り概ね順調に進められた。一方、理化学分析については、分析機器の稼働スケジュールが合わず、今年度実施予定であった副葬土器内から採取した土壌標本の脂肪酸分析を次年度に繰り越したことが、上記の自己点検評価の事由である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の課題の一つは、今年度実施できなかった葬送儀礼に伴う死者祭宴や死者への供物として消費された飲食物に関する証拠を提出するための理化学分析(脂肪酸分析)の推進である。このため、研究協力者と調整し、脂肪酸分析については次年度前半に実施することを確認し、確実に実施できる見込みが立った。また、理化学分析では水路遺構を理化学的に特徴づけるための珪藻分析等を追加する。いずれも分析対象試料は国内で所蔵している。最終年度である次年度のもう一つの課題は、得られた分析結果を当時の死生観や冥界観の解明あるいは古代「宗教」確立過程の解明というやや抽象的な次元へ実証性を保ちつつ橋渡しするための理論整備研究の追加である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度へ約15万円の繰越額が発生したが、これは、上に記した事由による理化学分析の次年度繰り越しのため生じた。 今年度繰り越し分については、次年度執行予定であった理化学分析委託費と合わせ同時に分析を実施する。また、次年度追加研究である珪藻分析及び理論整備研究のための図書資料費用等へ一部補完する。その他、旅費は研究協力者との打ち合わせ会議、国内・国際会議発表のための旅費に用いる。データ整理や図面作成補助のために謝金を用いる。
|