研究課題
若手研究(B)
本年度は、前研究課題より継続して、イタリアとフランスを中心とする、20世紀初頭の西洋美術における前衛と古典主義の関係をめぐる諸相に関する調査研究を進めた。国内および英国、イタリアにおいて一次資料、関連文献収集、作品調査、展覧会調査等を行った。この成果の一部は、「前衛と古典主義:1910-20年代のフランスとイタリアにおける画家たちの作品と著述」に執筆した。当該論文においては、アンドレ・ドラン、パブロ・ピカソ、ジーノ・セヴェリーニ、ジョルジョ・デ・キリコ、フェルナン・レジェらをはじめとする画家たちが、おもに古典回帰期に制作した絵画作品における特質を検証するとともに、先行研究と近年の展覧会企画の動向を踏まえて、現代の視点からどのように「前衛的古典主義」が語られているか併せて分析した。さらに古典回帰期の画家たちによる著述の刊行状況の概要を示し、ジーノ・セヴェリーニの作品、著作および未刊書簡の読解を通して、画家たちの「過去の美術」をめぐる叙述と絵画空間に共通してみいだされる特異な時間感覚について論じた。並行して、イタリアにおける美術館、文化財、社会の関係をめぐる調査を行った。本年度は関連文献の収集を行うとともに、インタビュー調査を実施した。フィレンツェ・ウフィツィ美術館、ミラノ・20世紀美術館、ローマ・国立21世紀美術館において、各館の館長やキュレーターから、20世紀のイタリア美術、現在と未来の美術館の機能と理想、コレクショニズムの歴史、現代建築と展示の関係などをめぐり、現場経験と歴史的研究とに根ざした知見を聞いた。
2: おおむね順調に進展している
作品調査、資料調査、論文執筆がおおむね順調に進んだ。一次資料調査においては、予想していなかった発見があった。平成26年度に計画していた、イタリアの美術館におけるインタビュー調査を本年度に実施し、当初想定していた以上の内容となった。本年度予定していたアメリカにおける資料調査は延期した。期間中に日程調整を行い、計画通り実施する予定である。
今後も継続して、おおむね計画書に沿って調査研究を行う。平成25年度に計画していた資料調査は期間内に実施する。
本年度は、図書購入を主として計画していた「物品費」を、他研究助成金より計上したため、次年度使用額が生じた。翌年度の物品費(主に図書購入)として使用する計画である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
CIHA2012 Nurnberg,,The Challenge of the Object, 33rd Congress of the Intenational Committee of the History of Art, Congress Proceedings, Germanisches National Museum
巻: 3 ページ: 808-812
日仏美術学会会報
巻: 33 ページ: 3-22