研究課題/領域番号 |
25871184
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹下 潤一 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (60574390)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 化学物質 / 有害性推論 / NOEL(無毒性量) / アセスメントファクタ / 複合影響評価 / 濃度加算法 |
研究実績の概要 |
化学物質の有害性推論手法の開発は、化学物質のリスク評価を実施する際の国際的な動物試験数削減の要請に応えるべく重要な課題である。平成25年度は既存動物試験データが有する相関関係を元に、QAAR(定量的活性活性相関)モデルの開発を行い、有害性の標的臓器間補完を可能にした。 平成26年度は昨年度の研究を踏まえ、影響臓器毎に暴露期間の外挿を可能とする有害性換算係数(アセスメントファクタ)を統計的データ解析に基づき定量化した。有害性の主要標的臓器として、肝臓、腎臓、体重、血液を取り上げ、標的臓器ごとに亜急性毒性試験(28日程度)のNOEL(無毒性量)を亜慢性毒性試験(90日程度)のNOELに換算するための係数を既存動物試験データより算出した。この解析を行うにあたり、昨年度構築した動物試験データを、暴露期間ごとに細分化し再整理した。また、この換算係数は、a) 同様の影響がより低い用量で発現する、b) 異なる影響が発現しそれがより低い用量である、の2つの寄与であることは知られている。平成26年度の研究において臓器ごとというくくりで見ればa)の寄与が支配的であることを明らかにした。 さらに近年急激に、化学物質の複合影響評価についての議論が国際的に活発化してきていることを鑑み、単物質の有害性推論手法に加え、複合影響評価に資する数理的課題の検討を行った。複合影響評価手法でスタンダードとなっている濃度加算法(CAモデル)による予測値と、同時暴露試験による観測値の定量的な比較を可能とするため、既存の統計解析手法を1次元から2次元以上に拡張することにより、CAモデルを点推定から区間推定に拡張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標は大きく2つあった。1つ目は昨年度構築した動物試験データを暴露期間ごとに細分化し、暴露期間外挿のための有害性換算係数(アセスメントファクタ)を臓器ごとに定量化すること。2つ目は複合影響評価に資する数理的課題の検討を行うことであった。 1点目については、統計的データ解析に基づき、肝臓、腎臓、体重、血液についてアセスメントファクタを定量化した。さらに、臓器ごとというくくりでみれば、アセスメントファクタは「同様の影響がより低い用量で発現すること」の寄与が支配的であることも明らかにした。この研究成果は論文として発表済みである。2点目については、複合影響評価手法でスタンダードとなっている濃度加算法(CAモデル)を点推定から区間推定に拡張することに成功し、CAモデルによる予測値と、同時暴露試験による観測値の定量的な比較を可能とした。 以上の研究進捗により、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度と平成26年度の研究により、ある物質について既存動物試験データが存在した場合、臓器間補完や暴露期間の外挿により、報告のないエンドポイント(標的臓器と暴露期間の組み合わせなど)に対してNOEL(無毒性量)の推定が可能になったといえる。しかし、これまでの研究成果では、対象物質に対して既存動物試験データが少なくとも1つ必要となり、既存動物試験データが存在しない物質については対象とすることができなかった。そこで来年度はより簡易な試験(細胞試験等)の利用を視野にいれた有害性推論手法の構築を目指す。なお、この研究課題を遂行するにあたり、細胞試験が実施可能な静岡県立大学・薬学部等と連携していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にソフトウェア「M-plus」をアップデート予定であったが、円安の影響で昨年度予算の範囲では購入できなかった。(M-plusの価格はUSドルで決まっている。)
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次年度使用額の使用計画 |
本年度予算と合算し、ソフトウェア「M-plus」をアップデートする予定である。
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