研究実績の概要 |
平成26年度は、4,9-dihydroxyperylene-3,10-quinone (DHPQ)の物理化学的な性質を中心に検証した。具体的には、水溶液および有機溶媒中におけるDHPQとAlイオンとの錯形成能の検討、FT-IRを用いた菌核粒子中のDHPQの状態推定、およびサイクリックボルタメトリーによるDHPQの電子伝達能の評価を行った。 水溶液中では、DHPQの3倍量程度のAlイオンを添加しても、錯形成は確認できなかった。このため、有機溶媒(1,4-ジオキサン)中のDHPQに、500倍量程度までAlイオンを共存させて錯形成を確認した。その結果、2倍量程度でも若干のスペクトル変化は認められたものの、100倍量のAlイオンが存在する時とはスペクトルが明らかに異なっていた。同様の化学構造を持つ5,8-dihydroxy-1,4-naphthoquinone (DHNQ), 1,4-dihydroxyanthraquinone (DHAQ), テトラサイクリンについても検討してみたものの、水溶液中および有機溶媒中での結果はほぼ同様であった。これらのことから、DHPQおよび類似化合物はAlイオンと積極的に錯形成をしないものと結論した。 また、粉砕した菌核粒子をFT-IRにより測定し、DHPQ、およびAlと錯形成したDHPQ(DHPQ-Al)のスペクトルとを比較した。その結果、DHPQ-Alに特徴的なピーク(1510 cm-1)は観察されなかった。このことから、菌核粒子に含まれているDHPQは錯形成をしておらず、DHPQそのものとして存在しているものと考えられた。 DHPQの電子伝達能については、ジメチルスルホキシド中でのサイクリックボルタモグラムを測定した。その結果、DHNQやDHAQとは異なる挙動が観察されたものの、これについては改めて検証する必要があると考えている。
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