研究課題/領域番号 |
25871186
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
朝倉 大輔 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (80435619)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 電極材料 / 酸化還元反応 / 軟X線分光 / オペランド解析 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に開発した有機電解液を伴うリチウムイオン二次電池用のIn situセルを用いて、正極材料、および負極材料に対して、オペランド軟X線発光分光による電子状態解析を行った。発光分光測定は、SPring-8の東京大学ビームラインBL07LSUを利用して実施した。充放電測定はサイクリックボルタンメトリーによって行い、本システムで可逆的な充放電が行えることを確認した上で、分光測定を実施した。 コンバージョン反応をともなう遷移金属酸化物系負極材料については、リチウム挿入によって、遷移金属元素の合金化(0価への還元反応)を確認することができた。また、リチウム脱離過程では酸化反応に対応する変化を観測した。低電位で進行する負極材料の反応を大気曝露環境を経たEx situ実験で捉えることは原理的に困難であり、本研究によって軟X線分光でも負極材料のオペランド電子状態観測が可能になったことは大きな意義があると言える。 正極材料については、インターカレーション反応を示す遷移金属酸化物系材料のオペランド解析を行った。遷移金属元素の可逆的な酸化還元反応を明らかにした。また、遷移金属と酸素間の軌道混成や電荷移動効果を考慮した多重項計算を実施し、充放電(リチウム脱離・挿入)に伴う電子構造変化を詳細に解明した。高分解能軟X線発光分光と計算を組み合わせることで非常に詳細な解析が可能となり、遷移金属の3d軌道のみならず、配位子である酸素の2p軌道が、充放電に非常に重要な役割を担っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度までにIn situセル開発が完了しており、本年度から様々な電極材料に対して本格的にオペランド解析を行うことが可能となった。順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本手法を他の電極材料にも広げ、充放電反応と電子構造変化の関連性・系統性を見出し、高性能材料の設計指針につながるような情報を引き出す。また、In situセルの改良も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に開発したIn situセルが予想よりも順調に機能し、平成26年度の研究遂行に必要な物品費が圧縮できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度未使用分を活用し、平成27年度にはIn situセルの改良を行う。さらに、学会発表を精力的に行う。
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