リン酸塩ガラスの構造はリン酸濃度だけでなく、添加物組成や合成温度等によってもガラス内のプロトン濃度や含水量が変化し、プロトン導電率に大きな影響を及ぼす。しかし、原料のオルトリン酸等に含まれる水分の一部が合成中に揮発するため、原料仕込み組成から残留水分量を規定することができない。本研究では、カールフィッシャー水分計やFT-IR、固体NMR等を用いて、リン酸塩ガラスの構造を明らかにするとともに、プロトン導電率との相関について検証した。 平成25年度は合成温度の影響について調べた。カールフィッシャー水分計にて評価した800℃,1000℃で合成した仕込み組成30mol%ZnO-70mol%P2O5ガラスの含水率は、それぞれ24.4mol%,5.6mol%であった。また、FT-IRでは3400cm-1と2800cm-1付近に吸収ピークが現れたが、いずれも800℃で合成したガラスの吸収率が大きく、1000℃で合成したガラスのプロトン導電率より1桁以上高くなった。 平成26年度は添加元素の影響について調べた。800℃で合成した30mol%BaO-70mol%P2O5ガラスの含水率は11.3mol%で、ZnO-P2O5ガラスより小さかった。FT-IRでは3400cm-1付近の吸収ピークが小さくなり、固体NMRではポリリン酸構造(Q3)の割合が大きいことを確認した。BaO-P2O5ガラスの導電率の活性化エネルギーは91kJ/molで、ZnO-P2O5ガラスの48kJ/molより大きかった。 平成27年度は新たな電解質膜・電極接合体(MEA)の作製手法について検討を行い、電極上にZnO-P2O5ガラス膜を形成する技術を確立することによって200℃で1.2mW/cm2の出力密度が得られた。
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