研究課題/領域番号 |
25871188
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
窪田 啓吾 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 研究員 (40586559)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 溶融塩 / 電解質 / リチウム二次電池 / イオン液体 |
研究概要 |
申請者が100℃で溶融することを見出した[(FSO2)(CF3SO2)N]-(以後C0C1と略する)のリチウム塩をベースに室温近傍(33℃)に融点を持つカチオン混合溶融塩Li[C0C1]-Cs[C0C1]を調製した。これは公知のアルカリ金属溶融塩の中では最も融点が低い。これはその融点の低さからゼロソルベントのリチウム二次電池用電解液として用いることができ、一般の室温用電解液と同様に合材電極とも組み合わせて45℃から100℃以上の広い温度域で充放電が可能であることが分かった。 有機溶媒、イオン液体などの一般にリチウム塩を溶解させる室温液体を用いていないことから、この溶融塩は非常に粘度が高く、また一方でイオン伝導率は低い(一般のリチウム二次電池用電解液と比べて粘性は10000倍でイオン伝導率は100分の1)。しかしながら、リチウム金属負極、リチウム二次電池用合材正極であるLiCoO2やLiFePO4と組み合わせてリチウム二次電池を構築して電池試験を行った結果、同条件の有機電解液の電池よりも高いレート特性を示した。この原因を調べるため電気化学交流インピーダンス測定を行ったところ、溶融塩は電極との界面の抵抗が有機電解液よりも小さいことが分かった。また、溶融塩のリチウムイオン濃度が高いことも原因であると考えられる。さらに溶融塩はゼロソルベントであることから蒸気圧が低く、充放電サイクル試験においても有機電解液よりも高い容量を長サイクル維持した。 このように、低融点リチウム塩を起点とした室温域アルカリ金属溶融塩は難燃性で優れた電池特性を示し、高安全、高エネルギー密度の電解液として期待できる。平成25年度はこれらの内容について1報の論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去の溶融塩を用いたリチウム二次電池は溶融塩の融点の高さから100℃以上で作動させる必要があったが、我々は低融点アルカリ金属溶融塩を調製し、それを用いて室温近傍で作動させることができた。室温域溶融塩は従来の溶融塩の難燃性、低揮発性に加えて室温域でしようできることから有機電解液と同様の取り扱い性を獲得しており、リチウム金属や室温用合剤電極とも組み合わせることが可能である。また、イオン液体電解液と比べてアルカリ金属溶融塩は有機カチオンを含まないためそれの熱・電気化学的安定性を考慮する必要がなく、非常にシンプルかつ安定性の高い構成である。H25年度はこのような低融点溶融塩の調製、その物理化学・電気化学的性質の測定、リチウム二次電池を構築しての電池試験を行い、2件の学会発表と1報の論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度はLi[C0C1]に対し他のアルカリ金属C0C1塩を添加することで室温域溶融塩を構築したが、これは低融点化する一方でリチウムイオン濃度、リチウムイオン輸率が低下してしまうことが分かっている。H26年度はリチウム塩のみで構成される溶融塩電解液(ゼロソルベントに加え、他のアルカリ金属イオンもなし)の構築を目指し、Li[C0C1]に他のリチウム塩を加えて低融点化したアニオン混合塩の調製を行う。調製した溶融塩について前年度と同様の物性測定、電池構築・試験を行う。 また、低融点溶融塩の特性として見出されたリチウム金属、電極部材に対する低い界面抵抗について電気化学インピーダンス試験をより詳細に行う。具体的には界面抵抗の温度依存性、充電容量依存性を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当時使用していた電池部材の耐熱性の問題から150℃以上の高温試験は難しく、購入予定であった高温電池試験用の恒温槽を使用する必要がなくなったため。(現在は耐熱用電極を入手して高温試験を計画中) 前年度と同様に、高温用電気化学測定のための耐熱性実験装置・器具の購入に使用する予定である。 また、溶融塩のNMRなどの依頼分析(室温~100℃以上の測定のため、従来の室温測定よりも条件が厳しく、費用も高い)に使用する予定である。
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