本研究の最終目標は「10:1 比のQHR分圧器の製作、および市販最高精度の計測器を超える0.1×10~(-6)オーダーの精度(不確かさ)での分圧比評価の実施」である。最終年度の今年度は、「10:1 比QHR 分圧器の製作」と「分圧比測定システムの構築」の2 本立てで進めていた研究成果を組み合わせ、QHR分圧器の分圧比評価を実施した。 「10:1 比QHR分圧器の製作」では、昨年度までの知見を元に10:1 比のQHR分圧器の設計を行い、製作に着手した。一方で、QHR分圧器の製作・評価に必要な液体ヘリウムが、世界的供給不足および納入元の設備停止のため十分に確保できない状況となった。また、10 V以下の任意電圧発生可能な電圧標準システムが実用化に至り、10:1 比が必須ではなくなった。これら研究開始時には想定していなかった事情により、本研究のQHR 分圧器の分圧比を10:1 比から2:1比に変更した。また、2:1比のQHR分圧器は、製作・評価に必要な液体ヘリウムを十分に確保できないため、既製作品を使用することにした。 「分圧比評価システムの構築」では、2:1比の基準抵抗分圧器の製作・評価を行い、製作品が2:1比QHR分圧器の評価で使用するに十分な性能を有することを明らかにした。 上述の成果を組み合わせて2:1比QHR分圧器の分圧比を評価し、公称比0.5の端子における分圧比を0.5 - 2.4×10~(-6)と評価した。また、この分圧比評価の標準不確かさを0.9×10~(-6)と見積もった。最終目標の10:1 比QHR分圧器評価には至らなかったが、2:1比QHR分圧器の分圧比を0.1×10~(-6)オーダーの不確かさで評価することができ、”真に基礎物理定数を基本とした電圧標準体系”を実現する見通しをつけることができた。
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