研究課題
若手研究(B)
本研究計画は、長鎖非コード RNA(lncRNA )機能の多様性を生み出す仕組みである選択的 3’末端プロセシングが、どのように発動・制御されているのかを明らかにし、 lncRNAの機能獲得機構を解明することを目的としている。本計画では特に NEAT1という細胞内構造体構築機能を持つ lncRNAの選択的3’ 末端プロセシングによる機能獲得機構を ① 3'末端プロセシング因子の翻訳後修飾、 ② シグナル応答、 ③ 転写と共役した制御に注目し、それらの未解決な問題点を明らかにしていくことで本研究目的を達成しようとしている。今年度は、 NEAT1 lncRNAの選択的3’ 末端プロセシングの制御因子である HNRNPKの機能を制御するような翻訳後修飾や相互作用因子の探索を試みた。HNRNPKは、リン酸化、アセチル化、アルギニンメチル化、ユビキチン化、SUMO化など多様な翻訳後修飾を受けることが知られており、その修飾酵素が明らかになっているものもある。そこで、HNRNPKの既知のリン酸化、アセチル化、アルギニンメチル化、ユビキチン化、SUMO化の付加酵素および脱修飾酵素の情報を利用し、それらとNEAT1 lncRNAとの共局在およびHNRNPKとの結合、RNAiノックダウンによる機能阻害を行った時のNEAT1アイソフォーム生成の変化を調査した。その結果、タンパク質アルギニンメチル化酵素の1つであるPRMT1が、NEAT1 lncRNAと一部共局在することが明らかになった。また、PRMT1をRNAiによりノックダウンするとNEAT1ロングアイソフォームの生成が減少した。これらのことから、PRMT1がHNRNPKの機能を正に調節する因子であると考えられるとともに、HNRNPKのアルギニンメチル化は、NEAT1ロングアイソフォーム生成に重要な役割を担う修飾であることが示唆された(長沼、未発表データ)。
3: やや遅れている
今年度は、申請者の研究実施場所の移転(産業技術総合研究所から筑波大学)に伴い、研究環境のセットアップ等に時間を費やしたため、しばらく実験が停止したこともあり、やや遅れ気味である。
現所属先がユビキチン化修飾の研究室である強みを生かし、HNRNPKに結合し、その NEAT1 lncRNAの選択的3’ 末端プロセシングへの機能を制御するようなユビキチン化酵素や脱ユビキチン化酵素の探索を中心に行っていく予定である。現在、予備的な実験ながらHNRNPKと相互作用する脱ユビキチン化酵素の候補を得てきている。今後は、その酵素のRNAiノックダウンによりNEAT1 lncRNAのアイソフォーム生成への影響などを検証していく。
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Molecular Biology Of The Cell
巻: 25 ページ: 169-183
10.1091/mbc.E13-09-0558.