本研究はNEAT1 lncRNAの選択的3’末端プロセシングが、どのように発動・制御されてRNA機能の多様性が生み出されているのかを明らかにし、lncRNAの機能獲得機構を解明することを目的としている。本研究では、NEAT1の選択的3’末端プロセシング制御因子であるHNRNPKのプロセシング制御機能が、どのように調節されているのかを明らかにする。また、NEAT1の選択的3’末端プロセシングを変化させるような生理条件やシグナル伝達経路を明らかにする。 平成26年度は、HNRNPKのプロセシング制御機能調節因子を新たに探索していくなかで見出したUSP10という脱ユビキチン化酵素活性を有するタンパク質に着目し、HNRNPKのプロセシング制御機能への役割を検討した。まずHNRNPKの特異抗体を用いて免疫沈降実験を行ったところ、USP10が共沈降してくることが確認された。また、USP10の特異抗体を用いた免疫沈降によりHNRNPKの共沈降が確認された。次に免疫蛍光染色によりUSP10の局在を確認したところ、パラスペックルと部分的に共局在することが明らかになった。USP10とNEAT1の相互作用を検証するためにFLAGタグ融合USP10を発現させた細胞から抗FLAGタグ抗体を用いてRNA免疫沈降を行ったところ、NEAT1の共沈降が確認された。さらに、USP10とHNRNPKとの相互作用にRNAが仲介する可能性を検証するためにFLAGタグ融合HNRNPKを発現させた細胞から抗FLAGタグ抗体を用いてRNase A存在下で免疫沈降を行ったところ、RNase A処理により相互作用が弱まることが明らかになった。今後は、USP10がHNRNPKのプロセシング制御機能を調節する分子機構を明らかにしていく。また、HNRNPK、USP10、NEAT1の3者間の相互作用の機能的意義を明らかにしていく。
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