H26年度及びH27年度の実験結果から、金属絶縁体相転移に伴い構造相転移も起こすNdNiO3のチャンネルは、固体ゲートに覆われると構造相転移を抑制されてしまうため、電荷をドープしても金属絶縁体相転移が起きず、抵抗率がほとんど変化しないことが分かった。そこで、H28年度は、構造相転移を伴うことなく金属絶縁体相転移を起こすと考えられているSmCoO3をチャンネルに用いて固体ゲートMott transistorを作製する研究を進めた。 まず、パルスレーザーデポジション(PLD)法を用いてLaAlO3及びNdGaO3基板上にSmCoO3薄膜を成膜するための研究を進め、条件最適化を行った。比較的酸素圧の高い雰囲気での条件最適化を行った結果、LaAlO3基板上に結晶性が高く絶縁性も高い薄膜の成膜に成功した。しかし、この絶縁性の高いSmCoO3膜を用いて固体ゲートMott transistor の作製を試みたところ、これまで利用して来たデバイス構造だとチャンネルの抵抗率が高過ぎてPPMSを用いた抵抗率の温度依存性の測定が出来ないことが分かった。常温で電荷ドープを行いドレイン電流の増減を観測するだけでは電子相が制御出来ているかは分からない。電子相の制御に成功したかを確認するためには、電荷をドープしていない時とした時の抵抗率の温度依存性を測定し比較する必要がある。そこで、チャンネルの抵抗率が高くてもPPMSで抵抗率の温度依存性の測定が可能なデバイス構造の開発に取り組んだ。具体的にはチャンネル幅を広く、チャンネル長を短くしたデバイス構造に変更した。また、固体ゲートであるHfO2膜を成膜する方法をスパッタ法から原子層堆積(ALD)法に変更した。現在、新しい構造のデバイスを用いて抵抗率の温度依存性を測定する研究を進めているところである。
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