研究課題/領域番号 |
25871197
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
増田 明彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (70549899)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 加速器 / 放射線 / 中性子 / 校正 / 高エネルギー中性子 |
研究実績の概要 |
サイクロトロン施設において7Li(p,n)反応を用いて生成される準単色高エネルギー中性子場に混在する低エネルギー連続成分のスペクトルを,複数のシンチレーターを用いた中性子飛行時間(TOF)法と放射化箔ボナー検出器を用いたアンフォールディング法との組み合わせにより測定する技術を開発した。 TOF法による測定については,昨年度の結果ではLiガラスシンチレーターを用いるkeV領域と有機液体シンチレーターを用いるMeV領域の接続領域の信頼性に問題があった。H26年度は100keV以下の領域では飛行時間情報を失った室内散乱中性子が支配的であることを測定結果とモンテカルロシミュレーションによる考察によって明らかにし,接続領域の問題を解決した。 放射化箔ボナー検出器については,昨年度のデモンストレーション測定に続き高エネルギー中性子場での本測定を行った。TOF法による測定結果を下限値100keVまで採用した信頼性の高い初期推定スペクトルを用いることでアンフォールディングの信頼性が向上した。一方,100keV以下の領域ではボナー検出器による測定に依存し,アンフォールディングに用いる初期推定スペクトルも予測に基づく外挿による。この領域の測定の信頼性を向上させるために,ボナー球検出器の応答関数の精度を改善するべく,産総研の中性子標準場における応答測定の精度向上に継続的に取り組んでいる。 今後はこのアンフォールディング法の精度向上に取り組むとともに,スペクトル形状の入射陽子エネルギーへの依存性についても考察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画は,1)測定下限をkeV領域にまで拡大した中性子飛行時間(TOF)法による測定の実現と精度向上と2)その結果を初期推定スペクトルとした放射化箔ボナー球検出器を用いたアンフォールディング法による測定の2点が柱となっている。 前者については,Liガラスシンチレーターと有機液体シンチレーターの接続エネルギー領域の整合性が課題であった。ターゲットから直接飛来していると考えられる時間依存性のある信号と,室内散乱中性子と考えられる時間情報を失っている信号を分析し,課題となっていた接続領域の整合性がとれ,測定結果の信頼性が向上した。 後者については,実際の高エネルギー中性子場での放射化箔ボナー測定を行い,TOF測定の結果を利用した初期推定スペクトルを用いてアンフォールディングに成功した。さらにアンフォールディングの精度を向上させるために応答関数評価の課題を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
時間情報を失っている室内散乱中性子が支配的であるためTOF法で測定できていないと思われる100 keV以下の中性子の評価に力を注ぐ。放射化箔ボナー球検出器のアンフォールディング法に依存するので,放射化箔ボナー球検出器の応答関数評価の精度向上に努める。応答測定では,検出素子が連続使用できない放射化箔であるために中性子標準場での散乱線の影響評価に課題があったが,昨年度のうちに散乱線測定に使う金箔素子を追加で準備しているので,これを用いて実験を行う。 また,入射陽子エネルギー50 MeVに加えて65 MeVについても同様の実験・解析を行い,エネルギー依存性についても議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
特注品を当初の見込みより安価に購入することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に使用する消耗品類の購入等に充てる予定である。
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