研究課題/領域番号 |
25871200
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
吉川 雅博 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (40584511)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 電動義手 / 3Dプリンタ / ソケット / 距離センサ / デザイン |
研究概要 |
本研究の目的は、操作性とデザイン性を両立する軽量・低コストな作業用電動義手の実現である。本年度はこのコンセプトに基づき、電動義手の試作を行った。アクチュエータ1個で対向配置された3指を開閉するシンプルな制御機構を採用することで、軽量・低コスト化しながら、様々な物体を操作することを可能とした。指先にはシリコン製のキャップとトーションバネを用いることで、対象を安定して把持可能とした。操作システムには、ソケット(切断肢を挿入する部分)に取り付けた距離センサ(フォトリフレクタ)で前腕の筋の隆起を検出し、隆起の大きさに応じて義手の指の開き度合いを制御する方式を用いた。使用者へのセンサの調整(キャリブレーション)は、ボタン一つの操作により3秒程度で終了する。ソケットに装着する特殊素材のサポータで締め付けることで、ソケットを容易に着脱とし快適性を確保した。対向配置の3指、着脱が容易なソケット、距離センサを用いた操作システムなどの機能性を担保しながら、身体と調和する滑らかな曲線から成る外観デザインにアプローチした。3Dプリンタで製作した場合、ソケットを含む総重量は300gとなり、従来の筋電義手の3分の1の重さとなった。上肢評価テストSHAPを用いたユーザ評価の結果、500g以下の物体を操作するような作業において有効に活用できることを確認した。評価に参加したユーザからも良好なコメントを得たため、次年度以降は製品化に向けた改良を進めながら、日常生活場面においてより多数名でユーザ評価を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した試作義手は、当初の開発コンセプトを達成できた。本年度は国際会議1件、原著論文1件(掲載予定)、国内会議1件、招待講演3件の発表を行った。また、試作義手を3回の国際展示会へ出品した。雑誌、テレビなどでの報道も8件(海外報道2件)と反響も大きく、当初の目的を達成できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は上肢評価テストで洗い出された課題を解決し、より多数名の切断者についてユーザ評価を行う。特に、日常生活場面での長期使用における使用感や耐久性などについて評価を行う。また、従来の筋電義手や能動義手のユーザを対象に使用中の義手と本義手との比較、本義手の使用による道具の身体化についても研究予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度支出額で、外注せずに本年度計画分の義手の要求仕様を満たすことができた。次年度に義手の大規模な改良(外注含む)を行うための予算を確保するため、次年度使用に繰り越した。 次年度使用額を用いて、現在の試作義手の外注を含んだ大規模な改良を実施する。
|