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2013 年度 実施状況報告書

電気化学的なアルコール発酵の制御とそのメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 25871209
研究種目

若手研究(B)

研究機関一般財団法人電力中央研究所

研究代表者

平野 伸一  一般財団法人電力中央研究所, 環境科学研究所, 主任研究員 (20392748)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードブタノール / エタノール / 電気培養 / 代謝制御 / 電子の流れ / 還元力 / アルコール発酵
研究概要

微生物の増殖や代謝は電子供与体から電子受容体への電子の流れに支えられている。この電子の流れを人為的にコントロールすることにより微生物の増殖や代謝を制御できる可能性がある。我々はこれまでにブタノール発酵細菌Clostridium acetobutylicumへ電気化学的手法(電気培養法)を用いて細胞外から電子を供給することにより代謝を制御し、ブタノールの生産量を顕著に向上できることを明らかにしている。本研究では、更なる生産性の向上や適用範囲の拡大といった産業的な利用価値を高める研究とともに、電子の供給によりブタノールが増産されるメカニズムの解明を目的としている。本年度は以下の3つの研究進捗が得られた。
(1). 蓄積とともに発酵阻害を生じるブタノールを有機溶媒により抽出する手法と電気培養法を融合した二相式電気培養法を開発した。培養液に対して有機溶媒としてオレイルアルコールを重層し、ブタノール抽出を行いながらC. acetobutylicumの電気培養を行った。その結果、ブタノール生産量を既存の培養法と比べ約5倍向上させることに成功した。
(2). 微生物の発酵経路は多くの共通部分を有している。そのため、電気培養法によるブタノール増産技術を他の発酵産物生産にも適用できる可能性がある。そこで、グリセロールを基質としてエタノール発酵を行う微生物種に本技術の適用を試みた結果、エタノールの生産量を約2倍向上させることに成功した。この結果は本技術を広範囲の発酵制御に適用できる可能性を示唆している。
(3). 電子の供給により転写レベルでの代謝の切り替えが生じている可能性が推定される。そこで、C. acetobutylicmのゲノム情報をもとに全遺伝子に対してプローブをデザインし、カスタムアレイを作成した。現在、制御メカニズム解明のため通電/非通電時での比較トランスクリプトーム解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

工学的な手法を融合することによって、電気化学的な培養法によるブタノール生産を更に向上することに成功した。また、この電気化学的な発酵制御法が異なる菌種、異なる発酵プロセスにも適用可能であることを新たに見出し、本技術の適用範囲を拡大できる可能性を示した。上記2点は、本アルコール発酵制御技術の産業利用の側面での有用性を向上させる有益な成果であり、当初の計画以上の成果である。また、この電気化学的な手法による代謝制御メカニズムの解明についてはトランスクリプトーム解析、代謝産物解析を行うための準備をH25年度に整え、H26年度の研究に向けて順調に進展していると言える。以上より、全体として順調に進展しているという区分とした。

今後の研究の推進方策

初年度に解析のための準備を整えることができたので、2年の研究では通電による代謝制御メカニズムの解明に集中し、トランスクリプトーム解析、安定同位体を使用した代謝変動解析を推進する。

次年度の研究費の使用計画

トランスクリプトーム解析や代謝変動解析に使用する物品の購入が遅延したため
トランスクリプトーム解析や、安定同位体試薬を用いた代謝変動解析に必要となる消耗品に使用する予定である。また、研究成果を広く公表するために学会参加費などにも充当する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件)

  • [学会発表] 電気培養法によるグリセロール廃液からのエタノール生産の促進2014

    • 著者名/発表者名
      椎葉千慧、平野伸一、松本伯夫、大村直也、安藤昭一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2014年度大会
    • 発表場所
      明治大学 生田キャンパス
    • 年月日
      20140330-20140330
  • [学会発表] 電気培養法による微生物の代謝制御2014

    • 著者名/発表者名
      松本伯夫、平野伸一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2014年度大会 [シンポジウム]
    • 発表場所
      明治大学 生田キャンパス
    • 年月日
      20140330-20140330
    • 招待講演
  • [学会発表] 電気培養によるグリセロール変換微生物Paenibacillus macerans NS-1株の代謝促進2013

    • 著者名/発表者名
      椎葉千慧、平野伸一、松本伯夫、大村直也、安藤昭一
    • 学会等名
      第65回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場
    • 年月日
      20130918-20130918
  • [学会発表] Clostridium acetobutylicumの二相式電気培養によるブタノール生産性の向上2013

    • 著者名/発表者名
      平野伸一、松本伯夫、大村直也
    • 学会等名
      第65回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      広島国際会議場
    • 年月日
      20130918-20130918
  • [備考] タイテック 電気培養システム&電気培養アレイシステム シリーズ特設サイト

    • URL

      http://taitec.net/Tips/ElectricCulture.php

  • [備考] 研究所 個人紹介HP

    • URL

      http://recruit.denken.jp/jobfile/filer05/

  • [産業財産権] 微生物を利用したブタノール生産方法2014

    • 発明者名
      平野伸一、松本伯夫
    • 権利者名
      電力中央研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2014-025671
    • 出願年月日
      2014-02-13
  • [産業財産権] パエニバチルス(Paenibacillus) 属細菌のグリセロール代謝促進方法2014

    • 発明者名
      平野伸一、松本伯夫
    • 権利者名
      電力中央研究所
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2014-031328
    • 出願年月日
      2014-02-21

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公開日: 2015-05-28  

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