研究課題
若手研究(B)
本研究では原始太陽系における天体衝突による氷天体の進化に焦点をあて、氷天体の衝突蒸発・化学反応に関する実験的研究をすすめることを目的としている。本年度は実験システム・手順の確立のために氷衝突用専用真空チャンバーの設計、製作を行った。氷試料を低温に保ち、また粉砕した試料からの昇華を防ぐために、液体窒素を用いた冷却ステージも製作した。液体窒素を供給し続けることによって実験中にはステージの温度をある平衡温度に保つことができるように設計した。本研究を成功に導くためには弾丸が化学分析の邪魔にならぬように酸化物の弾丸を射出する必要がある。チャンバー製作と平行してサボを用いた酸化物弾丸加速技術を確立した。プラスチックサボを分離し、直径2 mmの弾を7 km/s程度まで加速することに成功した。しかし設計、製作に手間どり、実際に稼働するには至っていない。現在のところ、まだ衝突実験の実施には至っていないが、「iSALE」という数値衝突計算コードを使った解析を行えるように整備した。iSALEは欧米の惑星化学コミュニティで整備されている計算コードであり、惑星科学者に対して公開されている。水氷の状態方程式、構成方程式を入力することができるようになっており、実験結果と計算結果を直接的に比較することが可能である。数値計算は実験では計測が困難な物質内部の衝撃波伝播の様子を調べることが可能である。そして、計算に入れた物理過程のみを反映した結果が返ってくるため、実験結果を解釈する際の強力な武器となるであろう。このように具体的な成果を得るには至っていないが、実験、理論の両側面の基礎固めをすることができた。
3: やや遅れている
申請者の異動に伴い、実験室の立ち上げを始めとする雑務により計画にやや遅れが生じている。しかし、今後は衝突実験のマシンタイムをより潤沢に使用できる見込である、
実績概要で述べたとおり、実験装置の製作は概ね終了している。今後は装置を稼働し、標的作成も含めた実験手順の最適化などを行う。純水氷への衝突実験を行い、高速撮像、発光分光、ガス分析の同時計測を行う。同時にiSALEによる数値計算を実施し、実験結果との比較を行う。H26年度は調和点、不調和点を整理し、水蒸気生成量を決める最重要パラメータを決定する。水氷の結果を論文にまとめると同時に標的を複雑にした実験に向けた最適化を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
Nature Geoscience
巻: 7 ページ: 279-282
doi:10.1038/ngeo2095
Shock Compression of Condensed Matter 2013, AIP Conf. Proc.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Origins of Life and Evolution of Biospheres
巻: 43 ページ: 221-245
10.1007/s11084-013-9339-0
Icarus
巻: 224 ページ: 209-217
org/10.1016/j.icarus.2013.02.023