研究課題/領域番号 |
25871213
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
澤井 仁美 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (50584851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘム / 鉄栄養 / 輸送タンパク質 / 構造機能解析 |
研究実績の概要 |
ヘム (鉄ポルフィリン錯体) は、多くの重要な生理機能を担うタンパク質や酵素の補欠分子として機能するだけでなく、無機鉄よりも吸収率の高い鉄栄養源としてほぼ全ての生物の生命維持に不可欠な化合物である。しかし、食餌から摂取したヘムがどのようにして生体内で輸送されているのかは、関与する分子の同定やその構造機能相関の研究が遅れており不明瞭な点が多い。本研究では、ヒトにおけるヘム輸送タンパク質の良いモデルとされている線虫の細胞間ヘム輸送タンパク質HRG-3を研究対象とし、鉄栄養源として獲得したヘムの細胞間輸送の解明を目的とした。 平成25年度に組換えHRG-3の調製方法を確立したので、平成26年度は生化学的手法や分光測定により、HRG-3のヘム結合に関する性質を調べた。HRG-3精製標品のヘミン滴定実験により、2分子のHRG-3に1分子のヘムが結合することを明らかにした。また、ヘム結合型および非結合型HRG-3のCDスペクトル測定により、HRG-3の二次構造はヘムの結合/非結合に関わらず、不規則構造をとることを明らかにした。さらに平成26年度は、HRG-3だけでなく、細胞外から細胞内へのヘム取り込むためのヘム輸送タンパク質HRG-4も研究対象とし、それらの構造機能解析により、鉄栄養源として獲得したヘムの生体内輸送メカニズムを詳細に解明することを目指した。HRG-4は、その一次構造から4回膜貫通型の膜タンパク質であることが推測されているが、既知の輸送体タンパク質とは異なる立体構造や機能メカニズムを有することが示唆されている。組換えHRG-4は、大腸菌など原核生物のタンパク質発現システムでは良質の試料が調製できなかったが、分裂酵母Pichia pastorisを用いて発現させることにより、構造解析に適した質と量の試料を調製できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度以降、生化学的手法や分光法による細胞間ヘム輸送タンパク質HRG-3の構造機能解析の他に、食餌から獲得したヘムを腸管細胞内に輸送するヘム取り込み輸送体HRG-4の調製を計画していた。いずれも計画通り順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
組換えHRG-4の調製方法も確立できたので、高純度に精製する方法を検討し、X線結晶構造解析による立体構造解析のための結晶化を行う。また、生化学的手法によりヘムの授受に伴うHRG-3とHRG-4の相互作用について検討する。
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