研究課題/領域番号 |
25871216
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
渡邉 信博 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (00540311)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 筋肉 / 痛み / タッチ / 緩和 / 循環 |
研究概要 |
本研究は、深部痛覚刺激に対する軽微な機械的皮膚刺激(タッチ)の効果とその神経性機序を解明することを目的とする。 今年度は、麻酔ラットを用いて深部痛覚強度を測定することの出来る実験モデルを確立した。具体的には、ラットをハロセンで初期麻酔した後、ウレタン(1.4g/kg)を皮下投与し、十分に麻酔が効いた状態で手術・実験を行った。実験中、気管に挿入したカテーテルより人工呼吸を行い、体温を生理的範囲内に維持した。頚動脈に挿入したカテーテルより動脈圧を測定し、得られた血圧波形より瞬時心拍数を算出した。侵害刺激として、圧刺激(10N/cm2)をラットの下腿内側面(下腿三頭筋の表面)に30秒間与えた。 皮膚接触面が直径6mmの刺激圧子を用いた圧刺激中、心拍および血圧の変化が見られた(最大変化:平均10拍毎分および12.5mmHg)。圧刺激範囲を4分の1にすると、侵害性圧刺激に対する循環反応は減弱した(平均3.7拍毎分および5.4mmHg)。一方、非侵害性圧刺激(2N/cm2)では、心拍・血圧共にほとんど変化が見られなかった(最大変化:平均3.7拍毎分および2.8mmHg)。 機械刺激領域の皮膚支配の神経(伏在神経および後大腿皮神経)を切断して、侵害性圧刺激を与えたところ、圧刺激により誘発される循環反応の程度にほとんど影響は見られなかった(最大変化:平均11.5拍毎分および8.1mmHg)。 以上の結果より、機械的圧刺激によって生じる循環反応は、麻酔ラットにおける筋の痛覚強度の指標になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、今年度中に深部痛覚に対するタッチの効果を検証する予定であった。しかし、実験モデルの確立に時間を要したため、進捗に弱冠の遅れが生じた。しかし、効率的に研究が進められる実験モデルが確立することが出来たため、次年度では計画の遅れが取り戻せる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度前半では、前年度に確立した実験モデルを用いて、深部組織への侵害刺激により誘発される循環応答に対するタッチの効果について検討する。本研究室における先行研究を基に、柔らかいエラストマー製ブラシを用いて、10分間持続的にタッチする。タッチの部位は、侵害性圧刺激を与えるのと同一の脊髄分節とする。侵害刺激による循環応答を一定間隔で繰り返し誘発し、タッチによる循環応答の程度の変化および変化の持続時間を検討する。侵害刺激がタッチにより抑制された場合、循環応答は減弱すると考えられる。 平成26年度後半では、タッチの効果の神経性機序を明らかにする。具体的には、抑制性伝達物質の受容体として知られるオピオイド受容体に着目して研究を進める。オピオイド受容体を薬理的に遮断し、タッチの効果を検討する。関連するオピオイド受容体が遮断されると、侵害性圧刺激により誘発される循環反応に対するタッチの抑制性効果は消失すると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、薬物を用いた侵害(化学)刺激を用いた実験モデルを確立して研究を進める予定であったが、再現性の良い実験モデルが確立できなかった。しかし、機械的圧刺激を用いた実験モデルを確立することができた。薬物を用いない実験モデルであったため、低予算で研究が進み、残額が生じた。 平成25年度生じた残額は、薬品(選択的オピオイド受容体遮断薬)の購入に充てる予定である。
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