研究課題/領域番号 |
25871219
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
浦本 豪一郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD) (70612901)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海底堆積物 / 微細構造 / 海底下微生物 / 微小団塊 |
研究実績の概要 |
平成26年度の前半に,初年度の研究で確立した海底堆積物の微細構造観察に関する手法論文が公表された.次の段階で本研究の最重要案件となる海底堆積物中での微生物細胞の局在性可視化技術の構築を進めた.まず,次亜塩素酸処理した天然堆積物試料に既知微生物(大腸菌)を混ぜた対照標準試料を用意した.試料をタングステン電子染色・遺伝子蛍光染色,樹脂包埋処理し,ミクロトームにより薄片作製した.薄片の蛍光顕微鏡観察では試料中の微生物細胞の蛍光シグナルを検出したものの,走査電子顕微鏡観察では,電子染色処理に用いたタングステンのシグナルが弱く,細胞の検出に至らず,試行錯誤を進めている. 平成26年度後半は,微生物活動に関連した海底地下での化学反応で形成された微小団塊の研究を進めた.試料処理では土壌団粒の比重分画法を海底堆積物の処理に応用し,堆積物から数μmスケールの微小団塊の分離技術を構築した.分離した微小団塊は,走査電子顕微鏡,X線μCTによる二次元・三次元の微細構造観察と,エネルギー分散型X線分析装置による組成分析を行った.その結果,大陸沿岸堆積物や外洋堆積物に多量の微小団塊が含まれることが分かった.外洋堆積物中の微小団塊は,微細構造と組成の特徴から,マンガンに富む微小団塊と鉄に富む微小団塊に分類され,また,外洋堆積物の地層内環境から,白亜紀に形成され,長期保存されている微小マンガン団塊が存在することも分かった.マンガン団塊の形成・保存について,新たな議論を展開する結果が得られ,論文執筆中である. また,平成26年11月末~平成27年1月末に,国際深海科学掘削計画 (IODP) の研究航海に参加し,新規試料を取得した.航海では,インドモンスーンの中心地域であるインド洋ベンガル湾・アンダマン海で海底堆積物が掘削され,白亜紀まで遡る高解像度かつ地球規模の古気候や生物進化研究を行う試料が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究遂行に必須となる海底堆積物の微細構造観察に関する論文が公表された(Uramoto et al., 2014). 次のステップとなる海底堆積物の間隙に生息する微生物細胞を可視化させる技術開発は,様々な試料処理技術や測定手法の試行錯誤を重ねている段階であるが,一方で,大陸沿岸や外洋堆積物を独自開発の手法で観察し,微小団塊を発見し,その形成要因や続成プロセス等に関する新知見が得られたことは研究が進展していることを示している. また,IODPによるインド洋航海に参加し,同航海で採取されたコア試料の堆積学的特徴を記載すると共に,本研究に関連する分析用試料を採取したことは,平成26年度における研究が着実に進捗していることを示している.
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今後の研究の推進方策 |
堆積物中の微生物可視化処理は,微生物の電子顕微鏡観察での検出感度をアップグレードさせるため,複数の重金属試薬を併用し,更にチオカルボヒドラジドのような微生物細胞に重金属をより強力に付加する試薬を用いることで,電子顕微鏡下で微生物細胞の分布を確実に検出する手法構築を目指す. このような可視化技術を,平成26年度の研究で発見した天然海底堆積物中の微小団塊の観察に応用し,微小団塊と微生物細胞の相互接続様式を明らかにする.また,インド洋における国際深海科学掘削計画の研究航海で取得した試料も,上述の手法によって処理・試料観察する.以上により,海底堆積物の続成作用と海底下微生物の局在性可視化技術を取りまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度後半に取得した海底堆積物内部の微細構造・微生物細胞分布の3次元解析用X線μCTのデータを迅速処理するシステム開発に時間がかかり,システム構築に必要なドライバー,ソフトウェアの購入を見送ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度前半に,必要なドライバー,ソフトウェアの購入を進め,速やかにデータ処理システムを構築する.
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