昨年度に引き続き,海底地下地層環境内に生息する微生物細胞を高精細可視化するために,細胞に重金属を付加する試料処理技術の検討を進めた.様々な重金属試薬を検討し,オスミウムーチオカルボヒドラジドーオスミウム法による試料処理法を導入し,日本近海の青森県下北半島沖,新潟県上越沖やインド東縁の海底掘削試料を走査電子顕微鏡ーエネルギー分散形X線分析装置で観察・分析したところ,オスミウム付加した粒子が鉱物粒子に比べて高い輝度を示す像を得ることができることが分かった.加えて,大型放射光施設(SPring-8)の高精細X線μCTを用い,オスミウムのX線吸収端前後のエネルギーレベルで試料を測定し,吸収端前後のCT断面像の画像演算処理を行った.その結果,オスミウム濃集域を特異的にコントラストを高めて検出できるまでに至った. これまでに得られた海底下地層試料の微細構造の観察に関わる試料処理方法と重金属付加技術による微生物細胞の予察的な試料観察結果は日本顕微鏡学会和文誌「顕微鏡」に投稿した.ただし,海底堆積物試料の場合,オスミウム付加した粒子は微生物細胞の他,類似構造を有する固体状有機物の可能性もある.そこで,今後,核酸蛍光染色も併用することで,海底下で生きていた微生物細胞の配置を可視化する試料処理条件を検討する.これによって,最終的に海底地下の地層内でどのように微生物が生きていたか実体を可視化して研究をまとめる.
|