研究課題/領域番号 |
25871227
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
岡村 文子 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫学部, 研究員 (10546948)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / CTL / オートファジー / 膵癌 / エピトープ |
研究概要 |
K-ras遺伝子の活性型変異と恒常的高活性オートファジーの誘導およびエピトープ産生の関連を明らかにするために、本年度は正常細胞株を用いて検討した。 K-ras遺伝子の活性型変異を持たない正常細胞株として、ヒト正常乳腺上皮細胞(MCF10A)を用いた。K-ras遺伝子の活性型変異(12番目のグリシンがバリンに変換される変異;G12V)遺伝子をレトロウイルスベクターを用いて安定発現細胞を作製し、ウェスタンブロット法にてrasの発現を確認した。次にこの細胞におけるオートファジーレベルをマーカーであるLC3の免疫染色法にて確認したところ、活性型変異k-ras遺伝子の導入細胞において顕著に高活性のオートファゴソームが観察された。 また細胞傷害性Tリンパ球への抗原提示を解析するためにエピトープを提示するHLA-A24遺伝子をレンチウイルスベクターにて導入し、発現細胞を陽性画分をセレクションして得た。さらにこの細胞の抗原提示能を検討するために、ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ(PSA)を抗原とし、オートファジー依存性かつHLA-A24拘束性エピトープを認識するCTLクローンと共培養して、特異的に認識した時に産生されるIFN-γを測定して検討した。その結果、活性型k-ras遺伝子導入細胞においてのみCTLクローンによるIFN-γの産生が増加していた。 以上のことから、活性型K-ras遺伝子の変異→高活性オートファジー→PSAエピトープの産生という過程が検証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はK-ras遺伝子の活性型変異と恒常的高活性オートファジーの誘導およびエピトープ産生の関連を明らかにすることを目標としている。初年度では研究計画として正常細胞の細胞株であるMCF10A細胞を用いて検討することを予定していた。最初に他のグループがすでにMCF10A細胞においてK-ras活性化型変異遺伝子導入により高活性のオートファジーが誘導されることを報告しているがそれが追試できた。次にK-ras活性化型変異遺伝子導入時にのみオートファジー依存性エピトープが産生されることが明らかとなった。以上のことから予定していた研究計画の検討を行って結果を得ることができたため順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、ヒト正常乳腺上皮細胞(MCF10A)において、K-ras遺伝子の活性型変異導入、およびHLA-A24遺伝子の導入細胞の作製して、恒常的オートファジーの観察およびオートファジー依存性エピトープの産生を観察することができた。膵癌では多くの腫瘍でK-ras活性型変異を有し、オートファジーの亢進も観察される。このため正常の膵臓細胞や膵管細胞で同様の現象が観察できるか検討する。 また、この現象の分子基盤を明らかにするための実験へと移行していきたいと考えている。具体的にはK-ras遺伝子下流のシグナル伝達の解析およびオートファジーに関連するシグナル伝達を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は旅費を他の研究費から支出したため、予定より余ったため次年度へ繰り越した。 より良い抗体の購入のため、必要な抗体を複数購入し検討するために使用する予定である。
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