研究課題
膵臓癌発生過程における活性型K-ras遺伝子変異と恒常性オートファジー亢進と、その結果生じるPSAエピトープの抗原提示を検討するために、本年度はヒト正常膵管上皮細胞を用いて恒常的オートファジー依存性エピトープの産生を検討するとともに、膵臓癌細胞株におけるPSAエピトープの抗原提示機構の解析を行うことを目的とした。昨年度は正常細胞にK-ras遺伝子変異を導入した際にoncogene-induced senescence (OIS) が生じてしまい、その後の検討ができなかった。通常の膵臓癌発生過程を参考に癌抑制遺伝子であるp53の発現抑制や、癌遺伝子であるc-mycの強制発現によりOISを回避できたものの、オートファジーの恒常的活性化が見られなかった。そこで今年度はp53遺伝子、c-myc遺伝子、K-ras遺伝子の導入の順番を様々に変えて検討した。昨年度と同様にオートファジーの恒常的活性化は見られなかった。このことから、検討した因子以外にも膵臓癌においてオートファジーが活性化するのに必要な因子が存在することが示唆された。これまでにPSAエピトープの産生には一般的なHLAクラスIエピトープの抗原提示機構に働いているプロテアソームが必要であることは明らかにした。同様に抗原提示機構に働いている transporter associated with antigen processing (TAP) の必要性を検討した。TAP1遺伝子の発現を抑制した膵臓癌細胞株でも非常によく抗原提示が行われて、特異的な細胞傷害性T細胞に認識されることが明かとなった。このことから、TAPを失った膵臓癌細胞においても本エピトープの生成が行われている可能性が示唆された。TAP遺伝子の欠損や発現低下は癌細胞においてのみ見られ、TAP非依存性エピトープは癌を対象とした免疫療法においては有用性が高いと考えられる。
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http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/ri/01bumon/05shuyo_meneki/index.html#member