図案は、いわゆる「工芸」と「デザイン」の両分野で研究対象とされてきたが、それぞれの分野における図案の意義や位置づけが異なるため、これまで包括的な研究は少なかった。本研究は、近代の図案および図案家について同時代の文献資料から関連事項を抽出・データベース化することで、当時の図案界の状況を俯瞰的にとらえ、今後の研究基盤の充実を図った。とりわけ美術と産業が密接に結びついて発展してきた近代の京都における動向に焦点をあてて考察することで、工芸品への図案の応用過程における図案家の役割をいくつかの具体例に即しつつ検証し、図案の重要性が当時の美術工芸界において広く共有されていたことを明らかにした。
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