研究課題
若手研究(B)
人工心肺に代表される体外循環は心臓血管手術において無くてはならない手技である。しかしながら、この体外循環は生体に様々な悪影響を及ぼすことが知られており、その中でも炎症反応は血液が体外循環回路・デバイスなどの異物に接触することで起こるとされており、臓器障害につながる重要な因子となっている。また、一般的に患者は人工心肺中、高酸素状態管理されることが多く、非生理的状態である。近年、生体中の過剰な酸素はoxygen free radical を産生し炎症や細胞障害を起こすことが分かってきている。このような背景のから、本研究では、我々が構築した小動物体外循環システムを用いた実験を行い、体外循環中の炎症反応と生体の高酸素の関係を明確にし、理想的な体外循環法を検討することを目的を目的としている。課題として以下の3つを掲げている。課題1. 高酸素管理体外循環において酸化ストレス及び炎症反応が増大されていることの証明。課題2. 体外循環中の高酸素のレベルによる酸化ストレス及び炎症反応の程度の評価。課題3. 体外循環による酸化ストレス及び炎症反応が主要臓器に引き起こす障害の評価。である。平成25年度は、主に課題1および課題2について研究を進めた。その結果、動脈血酸素分圧が400 mmHgを超えるような高酸素状態での人工心肺管理では生理的に近い条件(動脈血酸素分圧100-150 mmHg)に比較して炎症性サイトカインが有意に上昇していることがわかった。以上の結果から、高酸素の状態が体外循環中の炎症反応を助長している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定した、課題1. 高酸素管理体外循環において酸化ストレス及び炎症反応が増大されていることの証明。課題2. 体外循環中の高酸素のレベルによる酸化ストレス及び炎症反応の程度の評価。についてラットを用いた体外循環実験を施行し、血液サンプル、組織サンプルおよび生化学データが集まりつつある。本年度の予定を十分に達成できている。
最終年度となる平成26年度は、活性酸素種(スーパーオキサイド)を各臓器で検出し、体外循環による酸化ストレス及び炎症反応が主要臓器に引き起こす障害の評価する。さらに、血液サンプルからサイトカインおよび生化学データを計測する。さらに、これまでに得られた知見を統合して、体外循環中の高酸素管理下における炎症反応メカニズムを解明し理想的な体外循環法の検討を行う。
今年度は、これまでに持っていた実験回路等を使用することができたため、物品費(消耗品代)を節約することができた。よって、次年度使用額が生じた。次年度は、今年度に比べ、さらに動物実験が進み、血液サンプルが揃うことから検査費(外注検査費)および物品費の支出増加が予想される。サイトカイン等の検査費は高額であるが、次年度使用額含め、慎重かつ適切に使用していきたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)
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