研究課題/領域番号 |
25871233
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
中田 はる佳 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 非常勤研究員 (10592248)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療機器 / 臨床試験 / 治験 / 研究倫理 / インフォームドコンセント / 人工心臓 / 研究開発 / 先端医療技術 |
研究概要 |
平成25年度は、文献調査やヒアリングを通じて医療機器臨床試験の倫理的課題に関する国内外の議論を俯瞰し、論点整理を行った。特に、循環器領域の体内植込み型医療機器をモデルケースとし、議論の端緒とした。 (1)体内植込み型医療機器に関して、診療場面での議論(機器の停止など)は比較的見られたものの、研究場面における倫理的な課題を整理したもの、特に被験者保護の観点で議論されたものは20件程度にとどまった。これらの議論を精査すると、特定の臨床試験に関する議論に偏っていた。1980年代前半と2000年代前半に米国において人工心臓の臨床試験が行われ、これらの臨床試験に関連してインフォームドコンセントのあり方や、被験者・家族への対応などが議論された。(2)医療機器臨床試験は、医薬品臨床試験と異なる特徴を有することが指摘されていた。医療機器臨床試験においては、ランダム化あるいはプラセボを用いた比較試験が難しいことがある。また、特に人工心臓のような劇的な効果をもつものについては、統計的処理に耐えうるだけの被験者数を集めることが難しい(あるいは必要ではない)こともあることがわかった。以上から、現在の研究開発の状況や研究倫理の議論の状況に合わせて課題を再抽出した。体内に植え込むという特性にかんがみ、従来絶対的なものであるとされてきた「同意撤回」の再考、また、同意撤回後の対応という課題を抽出することができた。さらに、生命維持に大きく寄与する医療機器臨床試験においては、被験者への健康上の利益と臨床試験の成功が表裏一体となっており、臨床試験から治療的利益を得ることができると誤解する"therapeutic misconception"を避けることが困難である可能性も考えられた。また、被験者が参加後の生活において何に重きを置くか(QOL、延命など)という価値観も重要であるということが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外の議論の状況について、より具体的なケースに関する情報収集を行うため、専門家へのヒアリングを追加して行った。臨床試験の実際に即した論点整理を行うことができたが、当初計画していた所属施設内倫理委員会の審議資料レビューが若干遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず、実施が遅れていた所属施設内倫理委員会における医療機器臨床試験に関する議論の整理を進める。平成25年度に整理した論点に関する議論の有無、追加すべき論点の有無等を検討する。それと並行して、体内植込み型医療機器のうち、特に侵襲性が高く、生命維持に大きく寄与する補助人工心臓について同意撤回や治療中止に関する現状調査を進めていく予定である。また、文献調査やヒアリングなどを通じた議論の整理は、研究期間を通じて継続して行っていく予定である。
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