研究課題/領域番号 |
25871236
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
戦 冬雲 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (30616941)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 分子心臓学 / 生理活性物質 |
研究概要 |
拡張型心筋症(DCM)は厚生労働省特定疾患で、突然死や難治性心不全の原因となる難病です。現在、この病気に対しては、心臓移植以外に有効な治療法が確立されていない。最近、研究代表者らは、DCMの発病に心臓副交感神経活動の低下が関与する可能性が大きいことを発見した。そこで本研究では、児島・寒川らによって胃から発見されたグレリンというホルモンの心臓副交感神経活動の増大作用に注目した。この作用には、急性心筋梗塞の生命予後を改善する効果があると報告されている。本研究の目的はDCMの新たな治療法の開発を目指し、ヒトにおいて致死的な拡張型心筋症(DCM)を引き起こす心筋トロポニンT(cTnT)遺伝子欠失突然変異ΔK210を導入したノックイン(KI)マウスに対する生理活性ペプチドグレリンの治療効果と、そのメカニズムを調べることである。 本年度はDCM KI マウスに対するグレリン治療効果の検証を行った。生後1ヶ月のDCM KI マウスに、グレリン1ヶ月間皮下注射することで、DCM KIマウスの生命予後と心臓機能・リモデリングに対する効果を調べた。 その結果、グレリン注射はDCM KIマウスの生命予後と心臓機能・リモデリングを改善することが分った。1)生命予後:グレリンはDCM KIマウスの生存率を約60%から85%に大きく改善した。2)心臓収縮機能(心エコー):グレリンはDCM KIマウスの左室駆出率を有意に改善した。3)摘出心臓の肉眼的および病理組織学的所見:a.グレリンはDCM KIマウスの心重量及び心重量/体重を低下させた。b.グレリンはDCM KIマウスの心室線維化を抑制した。4)心臓の生化学的所見:グレリンはDCM KIマウスの左心室のBNP(心不全マーカー)発現量を低下させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の25年度の研究計画は拡張型心筋症ノックインマウスの生命予後と心臓リモデリングに対する治療効果を調べることであり、現在までに、in vivo、in vitro二つの手法を用いて、拡張型心筋症に対するグレリンの有効性が確認されたことから、本年度における研究目的の達成度としては概ね順調であると考えられる。。
|
今後の研究の推進方策 |
申請書記載した通り、26年度は拡張型心筋症ノックインマウスに対するグレリン作用機序の解明を行う予定である。グレリンを投与した拡張型心筋症ノックインマウスの心臓交感神経・副交感神経活動をin vivo、in vitro二つの手法を用いて解析し、その作用機序を明らかにしていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
予定していたiMakマイクロプレートリーダーElisa systemは研究代表者が所属している研究施設内に、共同研究機器として新たに導入されたため、本年度の研究費使用額は予定より少なく、残額が生じた。 26年度、申請書通りに主として、実験動物維持、薬剤、成果発表旅費などに使用する予定である。
|