研究課題/領域番号 |
25871243
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
平尾 直久 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70374915)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鉄水素化物 / 高温高圧 / 地球核 / 放射光 / X線回折 |
研究概要 |
本年度は,鉄-水素系の高温高圧領域における構造物性を調べるための基盤技術となる放射光X線回折用抵抗加熱ヒーター型ダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置の開発設計を行った.水素充填した金属-水素系試料に対する高温高圧発生の基礎基盤技術は未だ確立されていないため,地球核中の軽元素候補である水素の存在および存在量に不可欠な鉄水素化物の高温高圧下における結晶構造と相平衡関係,密度に関するデータは非常限られている.そのため,金属-水素系試料における安定的な高温高圧発生の技術開発・確立が非常に重要な課題である.開発したDACは,抵抗加熱法と近赤外線レーザー加熱法の相補利用が可能な設計であり,室温から2000K以上に至る広い温度領域において高圧X線回折実験が実現できる装置である.また,加圧用ガスメンブレンが装着可能な仕様としており,遠隔操作により,温度だけでなく圧力のコントロールもでき,精密な温度圧力調整下での物性測定が可能である.開発されたDACの要素技術の重要な点は以下の通りである.1. 圧力発生部のあるダイヤモンドアンビルは,熱伝導性の良い窒化ケイ素のプレート台座と高断熱素材のジルコニアのサポート台座から構成される二段式台座上に搭載されている.これにより,ヒーターからの熱を試料部へ効率良く伝導させるが,DAC本体へ熱が逃げ出さないように工夫されている.2. アンビル周りのヒーターは高均熱性と広範囲の温度に対応するため,ヒータープレートが採用されている.熱伝導の優れた窒化アルミニウムセラミックをベースとして作成し,抵抗発熱体と一体にすることで均熱性が高められている.同DAC高圧発生装置の新規開発により,広範囲の高温高圧条件下における鉄-水素系の物性研究が推し進められるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,本研究計画の基盤技術となる鉄-水素系における高温高圧実験に特化した抵抗加熱式ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置の新規開発設計・導入を行った.新規装置開発にあたり,鉄-水素系に対する広範囲の高温高圧条件下での物性研究を可能とするため,基本設計として抵抗加熱ができるだけでなく,放射光X線回折実験での利用,レーザー加熱法との相補利用およびガスメンブレンによる圧力操作も可能な装置仕様の詳細設計に時間を要した.また,同抵抗加熱方式では,ダイヤモンドアンビル高圧発生装置全体が高温状態に曝されるため,抵抗発熱体であるヒーター材や試料封入用金属ガスケット材,アンビル用台座など高耐熱材料にする必要があり,それらの材料選定にも時間が必要となった.これらの理由により,当初研究計画していた水素系における圧力スケール確立のための測定実施にまで至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
○地球核の圧力条件下での鉄水素化物の構造物性研究を行うためには,135GPa以上の圧力発生が重要であり,ダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用いた圧力発生の技術開発と発生圧力決定に必要な圧力スケールの確立を行い,高圧発生領域の拡大を図る. ○地球核中の水素挙動に関する知見を得るためには,高圧下での鉄水素化物の結晶構造と相平衡関係を明らかにすることが不可欠である.そのため,既存の高圧発生技術も取り入れ.放射光X線その場観察により,地球核の物質的解明を推進する. ○高温高圧領域における鉄水素化物の構造物性研究のため,抵抗加熱法による高温発生のみならず,近赤外線レーザー加熱法も利用して,測定可能な高温発生領域の拡大を図る.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においても金属ヒーター材および熱電対の消耗品類を追加で整備する必要性がでてきたため. 金属ヒーター材および熱電対の整備に使用する.
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