研究課題
水素は地球核に存在する軽元素の有力な候補の一つであり,鉄-水素系実験の重要性は認識されながらも,地球核相当の圧力温度発生における技術的困難さから実現されておらず,地球核中の水素の挙動,存在量とその影響は未解明のままである.本研究では,金属―水素系における高温高圧その場粉末X線回折に関わる基盤計測技術を確立し,その技術により鉄―水素系に関する結晶構造,相平衡関係および物性を地球核条件下で明らかにすること目指した.ダイヤモンドアンビルセル装置を用いた基盤技術の高度化により,100万気圧領域の圧力発生とレーザー加熱による1500K以上の高温発生が定常的に可能となった.その結果,従来,鉄水素化物はダブル六方最密充填構造相が地球核条件で存在する可能性が提案されていたが,地球核条件である135万気圧よりも低い高温高圧条件下で結晶構造相転移が確認された.また,金属鉄が過剰な鉄―水素系におけるX線回折実験が実施され,室温高圧下で水素化せずに存在していた過剰な純鉄が,高温高圧条件では消失し,全て鉄水素化物になることが見出された.さらに,単相となった鉄水素化物の体積は,これまで報告されている体積値と一致することが判った.このことは,これまで利用されてきた金属水素化物の化学組成に関する経験的な推定法である「体積膨張と金属格子中の水素量との関係式」が成立しないことを示している.地球核相当の温度圧力領域まで鉄-水素系の測定を拡張し,状態図を調べることが不可欠ではあるが,取得されたこれらの実験結果は,地球核中に存在する水素存在量が既存モデルに基づく見積りと異なる可能性を提案するものである.
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High Pressure Research
巻: 35 ページ: 16-21
10.1080/08957959.2014.999677