数式文法の認知機能に関する訓練実験と、その訓練効果の言語機能への汎化性を示すために、言語文法ならびに数式文法に関連する認知機能の評価実験を設計し、16名の被験者から行動データと機能的MRIデータを収集した。訓練実験で収集した行動データを解析した結果、実験中に被験者に与える聴覚・報酬のフィードバックの操作により、数式文法の認知機能の強化あるいは再学習を実験的に制御できることが示唆された。 数感覚と、痛覚ならびに視覚的意識に寄与する神経基盤の共通性を調べるために、二肢強制選択課題で統一した行動実験を20人の被験者に対して実施した。収集した行動データに対して試験的な解析を行ったた結果、課題成績の個人差が得られたが、数感覚と痛覚ならびに視覚的意識の間に、個人差の相関は見られなかった。その結果から、個人差が発生している神経情報処理過程において、各感覚と意識の間に共通の神経基盤が存在しない可能性が示唆される。現在、行動データに対する精密な解析を実施し、相関の有無について慎重に検証している。また、同一の被験者20名に対し、安静状態における機能的MRIデータの収集も終えた。今後、機能的MRIデータから課題成績の個人差を予測し、予測に寄与する神経活動の脳内分布に基づき、共通の神経基盤について更に知見を深める予定である。なお、この研究は、ブリュッセル自由大学のFilip Van Opstal博士との国際的共同研究の一環として実施した。 言語と数式の文法認知に寄与する脳内神経基盤の共通性に関する総説論文を、科学雑誌『Clinical Neuroscience』に掲載した。
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