研究課題/領域番号 |
25880002
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
太田 香 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50713971)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 車両ネットワーク / データ転送アルゴリズム / 通信効率 / 通信品質 |
研究概要 |
安全安心、省エネ快適な交通社会には高度道路交通システム(ITS)の構築が課題とされ、近年車両ネットワークの研究が注目を集めている。車両に無線装置やセンサを搭載することによって、車両による周辺観測や、車両間および車両・路側機間通信によるデータ共有が期待されている。そのような車両ネットワークを実現するためには、新たなデータ通信プロトコロの開発が必須である。特に車両の高可動性から、安定したデータ転送を実現するためのフォワーディングアルゴリズムは、重要な要素技術である。本研究では、多種多様なサービスを車両ネットワークで展開するため、通信効率や通信品質制御に優れたフォワーディングアルゴリズムの創出を目的としている。 本研究では、2つの異なるアプローチからフォワーディングアルゴリズムの開発を行っている。第一アプローチでは、これまで全く別の方法として研究が進められてきた既存アルゴリズムを融合することにより、高機能性はもちろん、低負荷で実装展開も十分可能なフォワーディングアルゴリズムの創出を目指す。第二アプローチは、実際に膨大な実データを解析することによって車両ネットワークに特化したフォワーディングアルゴリズムを創出する。 初年度の25年度は第一アプローチを実施し、主に関連研究の調査、転送制御理論の構築、制御メカニズムの設計、シミュレーションによる性能評価を行った。具体的には、各制御理論の長所と短所を分析し、それぞれで用いられる理論の利点を生かしつつ、お互いの欠点が補われるように融合させて新たな転送制御理論を創出した。これらの研究成果の一部は国際会議および国際的な学術論文誌へ投稿され、情報通信分野において世界最大規模かつ最も権威のある米国電気電子学会(IEEE)の主催する国際会議で論文を発表(確定)し、同IEEE の論文誌にも論文が掲載(確定)された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は主に関連研究の調査、転送制御理論の構築、制御メカニズムの設計、シミュレーションによる性能評価を行うこととなっていたが、当初の予定通り25年度はこれらの計画を順調に実行できた。初年度は1年未満の短期間にもかかわらず、研究成果の一部はIEEE International Conference on Communications (ICC)といったIEEE Communication Society最大規模の国際会議などを含む会議で発表(確定)された。また、無線通信分野においてImpact Factorが世界で最高クラスとなっているIEEE Transaction on Parallel and Distributed Systemsを含む論文誌にも、本研究課題の成果の一部として論文が掲載(確定)されている。以上のことから、本研究課題の進展度はおおむね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は研究実績の概要で述べた通り、第二アプローチを実施する。実際に運行する車両から得られたGPSデータ(実データ)を分析し、その結果から得た車両ネットワーク固有の特徴を用いて転送制御メカニズムを設計し、アルゴリズムを提案する。また、初年度に設計した提案アルゴリズムと比較して、性能評価を行う。具体的には、以下の手順で実施する。 1.膨大な車両から得られた実データを分析し、車両の移動モデル(個別、複数、車種別)、車両間のコンタクトモデル、車両密度の時間的および位置的な変化、などの特徴を抽出することで、その転送制御に対する有用性について考察する。車両ネットワーク特有の情報によって高機能な転送制御技術を創出できる可能性を明らかにし、アイディアそのものの新規性と有効性を示す論文を執筆し、国際会議へ投稿する。 2.第二アプローチによる提案アルゴリズムが完成した後は、シミュレーションによる本格的な性能評価へと移る。この時、各要件にかかるパラメータの調節においては、シミュレータによる実験を繰り返して行い、その結果を反映させながら改良を重ねる。 3.第一アプローチによる提案アルゴリズムとの性能比較を行う。本研究が目的とする高効率性や通信品質制御の点における有効性を確認する。 4.以上の提案プロトコルの技術的な詳細事項や性能評価実験の結果をまとめて、国際的な学術論文誌への投稿を目指す。
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