本研究の目的は,脚立や車椅子のような搭乗型道具をヒューマノイドロボットが活用するための,行動計画法とそれに基づく動作知識獲得機能の構成法を明らかにすることである.そのために本年度は,(1)行動レベル,(2)動作レベルそれぞれに焦点を当て,研究を遂行した. (1) 道具利用形態変化に対応可能な接触状態遷移記述実行方式:搭乗型道具を利用する際には,道具を運搬する・乗り込むといった利用形態変化が起こり,その間で生じる道具・環境・ロボットの間の接触状態遷移をロボットが扱うことが重要となる.本年度は研究代表者が先行研究にて行った,接触状態に基づく物体操作の行動記述実行方式を発展させ,道具操作・自律移動を接触状態に基づき統一的に記述実行する行動制御システムを提案した.具体的には,道具環境ロボット間の接触状態のうち,道具操作に対応する道具環境接触・道具ロボット接触の遷移,自律移動に対応する環境ロボット接触の遷移と,接触状態記述監視を別々に扱い,それらを階層化することで自律移動・道具操作を統合的に扱えること示した. (2) 動作生成器・制御器構築:搭乗型道具利用時には歩行のような脚移動だけでなく,脚腕協調した移動や道具操作が不可欠となる.本年度は,脚腕協調動作における接触やバランス維持・関節負荷軽減を考慮した動作生成器・制御器の構築を行い,検証実験を行った.動作計画法として,全身関節角度を求める逆運動学演算と手先足先接触力および関節トルクを考慮する力学最適化計算を反復計算する方法を適用した.また,計画された手先接触力および関節角度列を再現する制御器を構築し,検証実験を通して実ロボットにおいて脚立昇降動作が実現可能であることを示した.さらに本研究の成果として,ヒューマノイドロボットの全身動作生成器・制御器に関するソフトウェアを整備し,ソフトウェアのオープンソース化を段階的に進めてきている.
|