目的の音の聴取を容易にするために重要な到来方向の違いによる音響的特徴を明らかにするために、音響的特徴の操作を行って聴取実験を行う実験系を用いて、聴取実験を行った。また、目的の音を聞き取りやすく呈示するシステムを構築・評価し、この知見の有効利用によって、聞き取りやすい補聴器の開発等に貢献できることを確認した。具体的な実績は以下のとおりである。 目的の音の聴取を容易にするための音響的特徴として、平成25年度までに特に重要であることがわかった両耳間時間差について、より詳しい聴取実験を行った。その結果、2つの刺激音のうち一方の刺激音の両耳間時間差が0.3 ms以上であれば、他方の刺激音の両耳間時間差は0 ms以下、つまり正面から対側側であれば、目的の音の聴取が容易になることが示唆された。また、両耳間音圧差についても検討を行った結果、2つの刺激音の両耳間音圧差が対応する角度の差が30°以上であれば、目的の音の聴取が容易になることが示唆された。 また、両耳間時間差について、動的な条件で同様の実験を行った結果、頭部運動によって両耳間時間差だけが変化する条件で刺激音を受聴すると、1つの刺激音しか呈示していない場合であっても、音像が2つに分離して知覚されることを発見した。 さらに、明らかになった両耳間時間差の条件を元に、目的の音を聞き取りやすく呈示するシステムを構築した結果、システムを通さずに目的音とノイズを受聴した場合に比べ、目的音が聞き取りやすくなることわかった。
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