研究課題/領域番号 |
25880012
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
秋本 洋平 信州大学, 工学部, 助教 (20709654)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 確率的最適化法 / 進化計算 / 情報幾何 / 確率近似 / Markov Chain 解析 / 高次元最適化 / 制約付き最適化 / 国際情報交換 (INRIA, フランス) |
研究概要 |
本研究では,アルゴリズム設計やパラメータ調節コストまで考慮した最適化全体を通して効率的かつ統合的な進化型探索フレームワークの構築を目的とする.2013年度は,当初の研究計画に沿い,近年提案された探索フレームワーク Information-Geometric Optimization (IGO) に着目し,(1) IGOの一次収束性解析,(2) IGOの高次元最適化への拡張のほか,(3) IGOの制約付き最適化への拡張を行った.以下に各項目についての実績を報告する. (1) 研究計画通り,まず非制約連続最適化におけるIGOフレームワークの一次収束性解析を行った.確率近似の解析において広く利用されているODE法を応用し,IGOのパラメータによって定義されるMarkov Chainを解析することでパラメータの一次収束を証明した.さらに,この方法論を情報理論の観点から抽象化し,一般の最適化問題におけるIGOフレームワークの一次収束性が,IGOから導かれるODEの指数的収束性に帰着することを示した. (2) 高次元最適化問題ではアルゴリズムの計算時間およびメモリ使用量は次元数に対して線形にスケールすることが望ましい.これをIGOフレームワークで実現するために,IGOにおける確率モデルを次元数に比例したパラメータ数で表現し,このモデルにおける自然勾配を解析的に導出した.既存のアルゴリズムと比較することで,広い問題クラスで効率的であることを示した.この成果は国際会議GECCO2014にて採択され発表予定である. (3) IGOは探索空間の形状によらずに適用可能なフレームワークであるが,制約の存在により探索効率が悪化する.これを回避するために,実行領域上の切断正規分布における自然勾配を解析的に導出し,IGOフレームワークに適用した.この成果は国際会議に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,非制約連続最適化におけるIGOの一次収束性解析を2013年度に行い,一般の最適化問題への拡張を2014年度に行う予定であったが,現在までに拡張が実現されている.収束性解析の方法論および非制約連続最適化における一次収束の証明をすでに論文にまとめ始めており,この点で計画よりも進んでいる.IGOフレームワークの高次元最適化への拡張に関しては,計画通り2013年度に成果をあげ,すでに進化計算分野において権威ある査読付き国際会議GECCO2014に採録決定済みであり,計画通りに進展している.2013年度から2014年度にかけて,さらにIGOフレームワークを多目的最適化へと拡張する予定であったが,研究中に制約条件による悪影響が観察されたため,計画を変更し,先に制約付き最適化に対するIGOフレームワークの効率的な拡張方法について研究を進めている.この成果の一部は国内学会で発表し,さらに査読付き国際会議に投稿中である. 以上より,研究計画の一部を変更したものの,おおむね計画通りに研究が進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
IGOフレームワークの理論解析に関しては,当初計画よりも進んでおり,2014年度にはこれまでの成果をまとめるとともに,収束速度とパラメータの関係を明らかにし,パラメータの理論的推奨値を検討することでフレームワークの効率化を目指す. IGOフレームワークの拡張に関しては,研究実績および現在までの達成度に述べるように,一部計画を変更して研究を進めている.当初の予定では多目的最適化への拡張を行うこととなっていたが,制約付き最適化への拡張が急務と判断し,先に,制約付き最適化へのIGOフレームワークの拡張方法を,自然勾配の観点から研究する.既に実行可能領域上の切断積分布についての自然勾配を解析的に導出し,これを用いて拡張したフレームワークの線形制約下での有効性を実験により確認し,国内学会にて公表している.今後はより一般の制約条件下での有効性を実験により評価する必要性がある.次いで,多目的最適化問題へのIGOフレームワークの拡張を行う.当初の研究方策どおり,多目的最適化を単目的指標最適化として捉え,2013年度に行った高次元最適化に関する研究を拡張することで効率的な探索フレームワークを構築する.さらに,2014年度は制約付き最適化や高次元最適化に関する研究成果を論文にまとめ,公表に努める.
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