本研究では、新しいエンタテイメントシステムとして、映画や音楽といった視聴覚メディアから受ける印象や感情を、皮膚に対する温冷感刺激により変化させるインタフェースの実現を目指す。そのために、以下の2つを目的とする。 1.温冷感刺激が視聴覚メディアに及ぼす影響が特に大きい条件を選定し、その条件下における温冷感刺激の効果をモデル化する。 2.日常的な使い心地を考慮した温冷感呈示インタフェースを構築し、視聴覚メディアの鑑賞システムと統合することで、ホームシアターシステムとして実装する。 本年度は、2つ目の目的に対し、インタフェースの日常的な使い心地に関する基礎検討と、後頸部に対して温冷感刺激を呈示するウェアラブルインタフェースの評価を行った。まず、使い心地に関する基礎検討では、人体に加わる圧力を評価するための素材の開発・評価を行った。また、より日常的な状況を想定し、温冷感刺激が使用感、特に湿り感に与える影響や、香りが視覚刺激の印象に与える影響を評価した。これらの基礎検討と並行し、後頸部に温刺激を呈示するウェアラブル暖房システムを開発した。開発したシステムとホームシアターシステムを組み合わせ、後頸部への穏やかな温刺激が視聴覚メディア視聴時に及ぼす影響を、感性工学の手法により検討した。被験者に異なる種類の映像を視聴させ、後頚部への温刺激の有無による印象評価や生理的反応の差を比較した。結果として、温冷に関わる印象を持つ映像であれば、温刺激の提示によりその印象が変化する可能性が示唆された。この傾向は、昨年度までの研究における、音楽鑑賞時に温冷感刺激を呈示した場合と同様の傾向であり、共通した方法論になりうる。
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