研究課題/領域番号 |
25880022
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
山本 詩子 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (70707405)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 近赤外分光法 / 磁気共鳴拡散テンソル画像法 / 脳機能計測 / 複数刺激 / 脳神経線維 |
研究概要 |
複数の感覚刺激を処理する脳活動と、活動する皮質領域間を結合する脳神経線維との時空間的な相関関係を定量的に評価することにより、協調もしくは競合する複数の情報を時系列的に処理する脳内の動的な情報処理の本質に迫ることを目的として研究を進めた。脳は脳神経線維を通して情報をやりとりしながら情報処理を複数の皮質領域で行なっているため、複数の感覚情報を処理する脳活動のパターンを解析し、脳神経線維の構造的な結合特徴との関係を明らかにすることは重要である。 そこで、視覚刺激と聴覚刺激をそれぞれ単体で被験者に与えた時の脳活動および、両刺激を同時に与えた時の脳活動を近赤外分光法(NIRS)により計測して比較した。視覚刺激としてはチェッカーボード画像等を用い、聴覚刺激としては正弦波音等を用い、全頭を計測対象とした。その結果、各刺激単体のときに比べて両刺激を共に与えたときに、頭頂連合野付近において血流が減少する被験者が多く見られた。頭頂連合野は空間認知に関与すると言われているため、この結果から視聴覚刺激単体のときには刺激の発生位置を同定する機能を果たしているが、両刺激が共に入力されたときには複数の刺激情報を共に処理する必要があるため発生源の同定よりも多くの情報を処理することを優先して脳活動が起こったのではないかと考えられる。 また、課題によって脳活動が起こる複数の領域間を繋ぐ脳神経線維を全脳に渡って広く評価するため、非侵襲的に生体内を画像化する磁気共鳴画像法(MRI)を用いた磁気共鳴拡散テンソル画像法(MR-DTI)によって得た構造画像を用いて、全脳の脳神経線維を三次元的に再構成するシステムを構築した。さらに、NIRSによって計測される脳活動パターンと脳神経線維の三次元的な構造情報の関係性について検討するため、NIRSのデータ取得点情報と脳神経線維の構造情報を合わせて可視化するシステムを構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時における平成25年度の課題である、効果的に複数の刺激を与えて脳機能計測する環境の構築をほぼ完了し、近赤外分光法によって脳血行動態データを取得した。また、各刺激単体のときと複数刺激を用いたときの脳活動パターンを解析し、MR-DTIを用いて計測した脳構造情報から全脳に渡る神経線維追跡プログラムを開発した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、おおむね申請時の予定通りに進めていく予定であり、NIRSにより脳活動が見られた領域間を結合する脳神経線維を抽出し、その状態を定量的に評価する手法を開発する。また、得られた脳活動情報とそれらを結ぶ神経線維情報を統合解析する予定である。 本課題遂行にあたって困難な点の1つに、得られる各データの時空間座標が異なることが挙げられる。MR-DTIにより得られる元データは画像であり、再構成された脳神経線維の走行情報は3次元空間での位置座標で表されており、NIRSにより計測されるデータは3次元空間内に置かれた位置での時間変化であるため、それらを同時に評価するためには各被験者脳に対応させた正確な位置合わせが重要となる。平成26年度は前年度に引き続き、機能情報と構造情報を合わせて評価するシステムを構築する。 また、前年度に行ったNIRSによる実験では視覚刺激と聴覚刺激に用いた課題が意味的な関係の無いものであったため、情報の統合よりも競合に焦点を当てたものであった。そこで、より意味関係の強い視聴覚刺激を被験者に与えることによって、入力情報を統合処理する脳活動を計測し、複数の脳領域の機能的なネットワークと脳神経線維との関係について解析を進めていく。また、NIRSは脳表面に近い領域での計測に適しているが、脳深部の計測には適していない。そこでNIRSと比較して時間分解能は劣るが脳深部の機能計測も可能な機能的磁気共鳴画像法(fMRI)も部分的に用いてNIRSによる計測結果と照らし合わせる予定である。
|