本研究課題の最終年度である平成26年度は、主に提案する出力合流型HMMの複数の音楽情報処理技術への応用の開発、および今までの研究成果の発表と研究の取りまとめを行った。またその中でモデルの推定アルゴリズムに関する理論的な進展もあった。 自動伴奏と楽譜追跡技術においては、従来の方法で誤りの原因となっていた声部非同期性による音符の順序替えが含まれる演奏に対して有効なアルゴリズム構築を行った。その結果、ポリリズム楽節や時間的に広がった装飾音が含まれる複雑な多声音楽の演奏における楽譜追跡の精度向上を達成した。この成果は、関連研究と同時に国際会議2件(内1件は招待講演)で発表した。ピアノ運指においては、従来計算量の問題などにより扱えなかった両手同時の運指決定を可能とするアルゴリズム構築に成功した。自動採譜では、多声部音楽の演奏でポリリズム楽節など従来手法では精度が著しく低い演奏に対して、高精度のリズム採譜が行える手法とアルゴリズムを開発した。これらも国際・国内会議で発表した。 さらに、両手のピアノ運指モデルと編曲のモデルを統合することにより、合奏曲からのピアノ編曲手法を開発した。運指モデルを用いることによりテンポや音の密度などに応じて編集の量を自動調節することが可能な技術であり、チャレンジングな自動編曲分野の先駆的成果と認められ、平成26年度の情報処理学会山下記念研究賞を受賞した。 この他、研究期間には完了できなかったが、投稿中の論文もあり、開発した技術のシステム化、公開も準備中である。引き続き本研究成果の社会への発信に努めたい。
|