本研究は、経済学の手法と数理学の手法を組み合わせた新たな産業構造解析モデルを確立し、さらに技術・工学的知見と連結可能なモデルに拡張することにより、環境負荷・資源集約的な産業構造を検出し、持続発展可能かつ強靭な産業システムの構築を支援することを目的としている。上記の目的のもと、平成25年度は、(1)解析モデルの強化、(2)分析対象(ケーススタディ)の拡大、(3)技術・工学的知見との連結、について研究を進めた。 (1)解析モデルの強化に関しては、産業ネットワークを分割する手法として用いているグラフ理論の手法について感度分析や結果の差異についての分析を行った。具体的には、ネットワークを一度に複数のサブネットワークに分割する多分割法と、二分割を繰り返す二分割法について、比較を行い、多分割法を行う際に用いられる手法の不安定性や、政策単位の制御のしやすさから、分析対象によっては二分割法を用いる方が好ましいことを明らかにした。また、クラスターの認定基準として構成部門の上限数を採用し、Newman-Girvanモジュラリティ指数によって、最も適切な上限数を設定することにも成功した。 (2)国内のみならず、アメリカの産業構造を対象に二酸化炭素集約的な産業クラスターの検出分析を行ったり、また環境負荷だけでなく、日本国内の農産物(植物資源)のフローの解析を行うなど、分析の対象を広げることにより、手法の有用性を拡大させるとともに、分析結果をモデルにフィードバックすることにより、より頑健な手法の確立にも取り組んだ。 (3)技術・工学的知見との連結を可能とするために、種子島地域を対象とした詳細な産業連関表を作成することを目標に、データの収集、種子島地域の経済・産業構造の調査を行った。
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