1.平成26年度の研究実施計画に基づき、長野厚生連佐久総合病院人間ドック科の人間ドックデータについて、2008年度をベースラインとし2012年度まで追跡する新たなデータセットを完成させた。
2.仮説2「インスリン分泌不全者と抵抗性者では2型糖尿病発症の危険因子が異なる」の検証を行った。 2008年度に長野厚生連佐久総合病院の1泊2日人間ドックを受診した30-79歳の糖尿病でない地域住民3273名を対象とした。2008年度の75g経口ブドウ糖負荷試験の結果から算出したインスリン分泌指数とHOMA-IRにより対象者を3群(正常/インスリン抵抗性/インスリン分泌不全)に分類した。正常群、インスリン抵抗性群、インスリン分泌不全群の各群において、メタボリックファクターの個数およびメタボリックシンドローム有りの2型糖尿病発症リスクを算出した。結果、インスリン分泌不全群ではメタボリックファクターが2個集積すると2型糖尿病発症リスクが有意に上昇した。一方で、インスリン抵抗性群では、メタボリックファクターが4-5個集積すると有意に2型糖尿病発症リスクが上昇した。このことより、インスリン分泌不全者はより少ないメタボリックファクターの集積でも2型糖尿病を発症することが示された。また、メタボリックシンドロームのない正常者に比べて、メタボリックシンドロームのある抵抗性者では約3倍、メタボリックシンドロームのある分泌不全者では約5倍、2型糖尿病発症リスクが有意に上昇した。このことより、メタボリックシンドロームの2型糖尿病発症への影響はインスリン分泌不全者においてより大きいことが示唆された。
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