研究課題/領域番号 |
25882023
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松原 惇起 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90709677)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | メタボロミクス / 超臨界流体クロマトグラフィー / 質量分析 |
研究概要 |
超臨界流体を移動相に用いた超臨界流体クロマトグラフィー/質量分析(SFC/MS)では、メタボロミクスに一般的に用いられているガスクロマトグラフィー/質量分析や液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)、キャピラリー電気泳動(CE/MS)などでは分離が困難であった代謝物の解析が可能であり、これまで解析の対象とならなかった代謝物に関する情報を得ることができる。本申請課題ではSFCにタンデム型質量分析計(MS/MS)を接続した新しい分析システムを構築し、担がんマウスモデル、ならびに、がん患者血清中の酸化脂質を含む脂溶性代謝物を網羅的に解析する。これまで解析の対象とならなかった脂質、酸化脂質、および、胆汁酸などの重要な脂溶性代謝物に関する様々な情報を獲得し、これまでの研究成果などとも照らし合わせて評価を行うことで、治療効果予測や予後判定を含む新たながん早期診断法の開発へ向けた研究を行う。 当該年度は、SFC/MS/MSによる代謝物分析システムの構築に取り組んだ。まず標準品を用いて、SFCの操作圧力や流量,温度、添加剤などさまざまな条件を検討することにより、脂溶性代謝物分析システムの構築を試みた。結果として、これまでに、脂質、酸化脂質、カロテノイド、カロテノイド酸化物、胆汁酸などの脂溶性代謝物の分析系を構築することに成功し、それぞれの代謝物の質量電荷比と保持時間に関するデータベースを構築した。次に、構築した分析系のバリデーションテストを行い、直線性や再現性など、実用に耐えうる分析システムであることを確認した。また、血清や組織など生体試料への適用性も評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、SFC/MS/MSによる代謝物分析システムの構築に取り組んだ。これまでメタボロミクスの解析対象とならなかった脂質、酸化脂質、および、胆汁酸などの重要な脂溶性代謝物をターゲットとした代謝物解析技術を構築し、世界初の脂溶性代謝物臨床メタボローム解析システム確立の礎となるデータを蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、脂溶性代謝物の分析系を構築し、質量電荷比と保持時間に関するデータベースを構築する。また血清や組織など生体試料への適用性も評価する。しかし、脂質の中には抽出・精製段階で容易に酸化され安定に測定することが困難な代謝物が存在することが予想される。そのような代謝物に対しては、オンライン超臨界流体抽出(SFE)システムの適用を検討する。オンラインSFEシステムでは、抽出/分離/分析を一工程で行うことが可能であり、抽出物が酸素や光に触れることがないため、不安定な代謝物の分析に有用である。 次に早期大腸がん患者と進行大腸がん患者、ならびに、健常人から血清を提供していただき、SFC/MSに供し、得られた測定データを用いて多変量解析のひとつである主成分分析により統計処理を行うことで、早期大腸がん患者、進行大腸がん患者、健常人の血清の脂溶性代謝物の存在パターンがそれぞれ異なるのか否かを統計学的に明らかにする。さらに、実際に変動している脂溶性代謝物を、構築したデータベースを用いることで同定し、大腸がん患者と健常人との間で変動するものや、早期大腸がんと進行大腸がんとの間で変動するもの、さらには、手術前後で変動する脂溶性代謝物などを明らかにしていき、早期診断や治療効果予測に採用できるバイオマーカー候補を決定する。 これらの研究成果をまとめることで、SFCを用いた超早期診断法の開発への足がかりとする。さらに、これまでGC/MSを用いて得られた代謝物データと統合し、精度の高いがん診断システムを開発する。
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