中国山地は、たたら製鉄をはじめとする様々な人間活動に森林資源を供給してきた。岡山県真庭市および島根県飯南町で採取した堆積物の分析から、当地域では、約2000年前にはすでに、スギが優占するものの、落葉ナラ類、クリやアカマツをともなう二次林的な森林が成立していたことが明らかになった。中世頃には微粒炭の増加とともにスギが減少し、イネ科やヨモギ属などの陽性草本やアカマツ、ナラ類が増加した。周辺には古代~近世の製鉄遺跡が分布するが、とくに中世以降に、製鉄用燃料あるいは製鉄に携わる人々の生活燃料として森林が伐採され、二次林や草原が広がったことが明らかになった。
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