本研究では高齢者や障碍者の筋力や関節可動域といった,残存能力に対応した器具の定量的選定手法の確立を目的として,ベイジアンネットワークを用いた動作の解析手法と,患者の残存能力に応じた福祉機器の検討を行ってきた。 本年度は,下肢装具を使用した際の筋活動の推定手法の研究,周期的動作における分解された時系列中の動作の解析,片麻痺患者に杖をついたリハビリテーションを可能とする歩行補助機の開発等を主に行ってきた。 下肢装具を使用した際の筋活動の推定手法の研究では,筋活動推定モデルのブラックボックスとなっていた部分が,生体力学的に正しい構造になっている事を明らかにした。 周期的動作における分解された動作の解析については,時系列で分割された各動作ごとにベイジアンネットワークを組むことにより,体の各部分を動かすタイミングを明確にする手法を開発した。これにより,リハビリや日常生活動作の訓練において,理学療法士から患者への効果的な指示が可能になると考えられる。 歩行補助機の開発では,患者が歩行器に頼りきりで訓練を行うのでなく,退院後に杖を使った生活をする事を視野に入れた訓練を可能とした。歩行機能が回復してきた患者に対し,病棟において見守り無しに安全に杖歩行訓練ができるために,転倒時に自動的に制動がかかり,なおかつ手を使わずに歩行補助器を人間に追従させる機構を開発した。また,本件は2015年2月に特許出願を行った。
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