研究実績の概要 |
1.湿潤変動帯に位置する日本列島では、降雨に起因する斜面崩壊が多数発生している。本研究では、2001~2011年に発生した4,744件の斜面崩壊を対象とし、斜面崩壊の規模-頻度と雨量との関係、および台風の影響を解析した。その結果、累積雨量~250mm、最大時間雨量~35mm/h、平均雨量強度~4mm/h を超えると、規模の大きな斜面崩壊の頻度が高くなり、台風の寄与率は最大で約40%であった。また、雨量が増加すると斜面崩壊の頻度と総崩壊土量が増加するが、それらの関係は非線形であり、両者は一致しないことが示された。現在の気候下において斜面崩壊の頻度とそれによる総侵食量を最大にする降雨イベントが存在し、それらの再現期間は約40年以下であることが示唆された(Saito et al., 2014, Geology)。
2.平成24年7月九州北部豪雨により多数の斜面崩壊が発生した阿蘇山周辺を対象として、斜面崩壊地の地形的特徴の解析と土砂生産量を推定した。特に本研究では、小型UAV(無人航空機)とSfM/MVS写真測量の技術を用いて、高精細の空中写真とDSMを取得した。また、異なる時期のデータを用いて解析をおこなった。その結果、空間解像度4 cmのオルソ画像と、10 cmのDSMが得られた。阿蘇・仙酔峡では、約300箇所で斜面崩壊(投影面積 10~10,000m2)が発生した。2004年と2014年の地形を比較したところ、推定される土砂生産量は1.1~1.5×100000 m3 / km2 であった。斜面崩壊は平均傾斜約40 °の斜面で多数発生し、その平均深は ~1m 程度であった。また地形条件に加え、過去の斜面崩壊発生履歴が、斜面崩壊の発生に影響した可能性が示唆された(齋藤ほか、2015、日本地理学会春季学術大会)。
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