研究課題
研究活動スタート支援
骨格筋ミトコンドリア機能は,生理的・病的な刺激に反応して機能をダイナミクスに変化させる.運動トレーニングは骨格筋ミトコンドリア機能の増加をもたらすが,加齢や慢性疾患は骨格筋ミトコンドリア機能を低下させる.一方,これらを評価するためにしばしば筋生検が用いられるが,この方法は生体を傷つけて組織標本を採取するために非常に侵襲性が高い.したがって,本研究は,リン磁気共鳴分光法(31P-MRS)と近赤外線分光法(NIRS)を併用して非侵襲的なヒト生体における骨格筋ミトコンドリア機能測定法を開発し,それを用いて骨格筋ミトコンドリア機能の生理的・病的変化の解明と骨格筋ミトコンドリア機能を反映する生体指標やバイオマーカーの探索を行うこと目的としている.昨年度は,31P-MRSとNIRSを用いた骨格筋ミトコンドリア機能の開発を行った.本研究における骨格筋ミトコンドリア機能の測定法の特徴は,31P-MRSから得られるクレアチンリン酸(PCr)とNIRSから得られる酸素化ヘモグロビン・ミオグロビン(Hb・Mb)の濃度変化からATPおよびO2の代謝能を推定するとともに,それらの結合能を評価することができる.実際に有酸素能の高い長距離選手では,一般者に比較して骨格筋におけるATPおよびO2の代謝能が高かった.しかしながら,これらの結合能に違いは認められなかった.一方,本研究の測定の問題点としてNIRSから得られる酸素化Hb・Mbの濃度は,介在組織,とりわけ皮下脂肪厚の影響を強く受ける.したがって,本研究の測定法を用いて,被験者間の差を捉えるためには,皮下脂肪厚を考慮したO2の代謝能の算出が必須である.したがって,現在,被験者数を増やすとともに皮下脂肪厚を考慮したO2の代謝能の算出を行い,本研究の測定法の妥当性を検討している.また,本年度に予定している運動トレーニング介入などの準備を進めている.
2: おおむね順調に進展している
昨年度は,研究計画通り31P-MRSとNIRSを併用した非侵襲的な骨格筋ミトコンドリア機能の開発を行った.しかしながら,妥当性を得るための被験者数がやや不足していることやO2の代謝能を評価する上での皮下脂肪厚の影響を考慮するなどの課題が出た.
本年度は,本研究における骨格筋ミトコンドリア機能の測定法を用いて有酸素能力の違いの影響や運動トレーニングの効果を検討する.また,骨格筋ミトコンドリア機能を反映する血管機能などの生体指標や血液生化学的解析によるバイオマーカーの探索を行う.
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