研究課題
骨格筋ミトコンドリア機能は,生理的または病的な刺激に反応して従属的に変化するが,これをヒト生体において非侵襲的に評価する有効な方法はない.本研究は,磁気共鳴分光法(MRS)と近赤外分光法(NIRS)を併用することにより,ヒト生体における非侵襲的な骨格筋ミトコンドリア機能測定法を開発することを目的とした.本研究の骨格筋ミトコンドリア機能測定法は,MRSとNIRSを併用して下肢を15分間にわたって虚血にした際のMRSから得られるクレアチンリン酸(PCr)とNIRSから得られる酸素化ヘモグロビン(oxy Hb)の変化を解析し,ATPおよび酸素代謝を推定するとともに,それらの結合均衡能を捉えようとするものであった.健常若年者を対象にMRSおよびNIRSを用いて,15分間の下肢虚血中の下腿筋のPCrおよびoxy Hb濃度の変化を測定した.その結果,PCrおよびoxy Hb濃度の最大減少速度は,非運動鍛錬者に比較して運動鍛錬者において顕著に大きかったが,結合均衡能は,両群間に顕著な違いを認めることができなかった.本研究において,骨格筋ミトコンドリア機能の指標として開発した結合均衡能は,P/O比に相当するものである.P/O比は,運動トレーニングや加齢あるいは慢性疾患によって変化するという報告と変化しないとする報告が散見する.申請書らの疾患モデル動物を用いた解析では(J Appl Physiol, 2013),健常マウスと肥満マウスの骨格筋ミトコンドリアにおけるP/O比に顕著な違いは認めらなかった.また,運動トレーニングを施行してもP/O比は変化しないとする報告もある.したがって,本研究のヒト骨格筋の非侵襲的な解析から,骨格筋ミトコンドリア酵素活性の増加によって(Endocrinology 2014),ATPおよび酸素代謝は亢進するが,結合均衡能は変化しないことが示唆された.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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