LRH-1(NR5A2)は胚性幹細胞で発現が見られることからもわかるように初期発生で重要な役割を果たすだけでなく、肝臓、膵臓、卵巣等で遺伝発現制御を担っている転写因子である。LRH-1はN末端、Zinc fingerモチーフからなるDNAを結合ドメイン(DBD)、リンカーとなるヒンジドメイン、そしてC末端にリガンド結合ドメイン(LBD)をもっている。これまでに、大腸菌を用いた大量発現系により、ヒトLRH-1の4ドメインからなる全長タンパク質およびDNA結合ドメインーヒンジドメインーLBDの3ドメインからなるタンパク質の調製を行い、LRH-1レスポンエレメントを含む2重鎖DNAとの複合体を調製をした。これらのサンプルを用い、X線溶液散乱(SAXS)解析と共に結晶化を試みた。全長タンパク質とDNAとの複合体については、LBDのAF2サイトと呼ばれる領域に結合することが知られているコアクティベーター由来ペプチドとの3成分複合体としてもサンプル調製を行うことができ、結晶化実験に供した。SAXS解析の結果、N末端の有無にかかわらず、全体として細長い分子形状をもつことが示唆され、またサンプルとしても結晶化も供するに適していることも明らかになった。これまでにいずれも結晶は得られていないものの、今後さらに複合体を安定化する方向でサンプル調製を行っていき、当初の目標である全長分子とDNAとの複合体の立体構造決定さらには分子メカニズムの解明につなげていきたい。
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