研究課題
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome: CFS)は、原因不明の強い全身疲労倦怠感などが長期間に渡り継続する病態である。われわれは、ラットに水浸疲労負荷を与えることにより疲労状態を再現し、血漿や肝臓を対象に網羅的メタボローム解析を実施した。疲労負荷によってTCA回路内のクエン酸などが減少してエネルギー産生が障害される一方、シトルリン-アルギニンバランスの変化や総一酸化窒素量の増加などといった尿素回路動態も疲労負荷の影響を受けることを見出した(Kume et al, PLOS ONE, 2015)。また、疲労負荷を与えたラットの肝臓では、尿素回路やグルタミン酸代謝を介してTCA回路内のコハク酸に流入することでエネルギー代謝を回復させようとする疲労特有の代謝経路(疲労代謝回路)の存在が予測された。われわれは、同回路の酵素阻害実験や肝組織の免疫染色を行い、疲労時における疲労代謝経路の活性化を確認した。さらに、尿素回路の代謝物であるオルニチンが、尿素回路の代謝やエネルギー代謝の動きを促進するかを生化学的に検証した。疲労負荷時にオルニチンを5日間経口投与し、ラット肝臓中の血液を灌流除去した後、肝臓を採取して網羅的代謝物解析を行った。その結果、オルニチン投与によるエネルギー代謝への影響は限定的であった一方、他の代謝経路へオルニチンが流入する知見が得られた。現在、オルニチンが解糖系やクエン酸回路を含むエネルギー代謝に与える影響を確定させるために、13C-グルコースをトレーサーとする代謝フラックス実験にも取り組み、エネルギー代謝への影響を調査中である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS ONE
巻: 10(3): e0120106 ページ: -
10.1371/journal.pone.0120106. eCollection 2015.
医学のあゆみ
巻: 249 ページ: 299-303